千年の落涙-2
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…… かおり
香…… 遠くで“母”が、そして“父”が自分の名を呼んだような気が……
ひかりが…… 光が収束していく。
そして、香の意識が再び……
「ほんとうに良いのかい? 香?」
“母”は、そう申し訳なさげに声を掛ける。
「ほんと、お父さんもお母さんも心配しないで、私って結構家事に自身あるんだから!」
両親の心配をよそに、香はひどく的外れな答えで返した。
「…… おっ、おかあさん…… やっぱり、わたしも、私も連れて行ってください」
けして悪夢に臆しての心変わりでは無かった。
それは二年もの年月を優しく見守ってくれた“両親”の想いが、“娘”の傷跡を癒し終えた瞬間であったのかもしれない。
「そうだね、香、それが良い」
“父”はいつになく、力強くそう言うのだった。
「水面の少女加奈」 完
…… その様子を忌々しげに覗き見る影があった。
「ちっ、加奈のやつ、残された、たった一度の超常の力を…… それも自分自身の未来の為に使いやがって…… まぁ、それも良いだろう。これであの女もただの下等な生き物に成り下がった。あの分では仮に転生が可能でも、正しく能力を引き継ぐことはないであろう。いずれにしても、あの石崎佑香の様な訳にはいかなかったってことか……」