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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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F.-2

「岩本さん、ご飯来ましたよー」
夜勤者の声にハッとなる。
今日の夜勤は高橋さんだ。
「あらっ。明日も晴れなんですねー。良かったですねー!ここから見える朝日って綺麗ですもんね」
高橋は岩本さんににこやかに話し掛けた。
「そうなの。ここから見える太陽はすごく綺麗なのよ。明日は早くからブラインド開けてね」
岩本さんは笑いながらそう言った。
陽向は「じゃあ、また明日」と言って高橋と一緒に部屋から出た。
「早く帰りなよ」
「あ…まだ記録終わってなくて…」
「えぇっ?!風間、今日は入院…と退院とHCUからの転入か……。あはは、お疲れ」
高橋は笑いながら陽向の頭をポンポンと撫でた。
「はは…」
「頑張れっ!」
高橋は陽向の背中を叩いて勤務に戻っていった。
あんな風な優しくて強い人になりたいな…。
なんとなく、そう思った。

約束の21時にはギリギリで間に合った。
「陽向遅れてくるかと思った」
洋平がケラケラ笑う。
「あたしも遅れるかと思った」
2人して笑っていると、大介が無茶なアドリブを始める。
そして、それに合わせて洋平と海斗のセッションが始まる。
いつもの流れだ。
陽向も負けじとそのセッションにノる。
なんだっていい。
楽しければ。
洋平は最近スカが好みでそれを取り入れてくる。
スカに合った動きのある音を奏でる海斗も楽しそうだ。
裏拍を器用に操る大介は「裏拍ちょー苦手!」とか言いながら密かに練習してたのかな。
イケてるハットの音。
陽向は踊りながらそのセッションを楽しんだ。
3人も大笑いだ。
そこから曲が生まれる。
それも、いつものこと。
「今の、すげー良かったんじゃね?」
「あぁーっ!忘れた!完全ノリだった。でもメロディー的にはイケてた」
海斗が叫ぶ。
「うぁー。マジちょー惜しいコトした…」
海斗は音を消してベースを指で弾きながらブツブツ言った。
「陽向、もっかい歌って」
「えっ?今の?」
「そーそー」
正直覚えてない。
しかし、テキトーにキャッチーな音を辿り歌を歌う。
「うぉー!思い出した!」
海斗が再び叫ぶ。
洋平が機械を操作し、持ち場に戻る。
長い長い間奏的なのを終えたところで陽向は黙った。
演奏が鳴り止む。
「ネタ切れってトコで」
洋平が機械を再び操作する。
「録ってた?」
大介がニヤつく。
「あったりまえよー!海斗が名残惜しそーにすんの滅多にねーし!」
洋平はそう言いながらたった今録った音を流した。
みんなでそれを聴く。
「うぉ!ちょー良い!」
洋平が楽しそうに言う。
しばらく新しく生まれた曲で盛り上がり、既存の曲の練習に入る。
「うしっ!じゃーやるか」
大介がそう言った時に始まる曲は分かっている。
陽向は海斗と洋平に丁寧にお辞儀をした。
カウントもなく声とギターが混ざり合う。
互いに分かっているんだろうな。
2人で笑いあって奏でるこのメロディーは、かけがえのない音となって、この世界をまとめるんだ。

練習が終わり、受付でお金を出す。
「陽向、1500円」
「あいっ」
そう言いながら受付の前に行くと佐藤さんに「いらねーよ」と言われた。
みんなで頭にハテナを浮かべる。
「今度ココでライブ演ってくれるし……だったらいらねーよ。だいぶ黒字だから」
「えっ?」
「チケット作って売ったんだけどさ、死ぬほど売れてソールドアウト。だからお前らから金とったら申し訳ねーよ」
4人は顔をニヤつかせ「ありがとうございます!」と言って佐藤にスタジオ代を払った。
いらないと言われているのに。
「だから…いらねーって」
「俺ら…」
大介は言った。
「俺らここのスタジオが好きでいつも来てんすよ。だから、金いらねーとか、そーゆーの関係ないんすよね。人として、この場所使った時間くらい払わせて下さい」
大介はそう言い、みんなからお金を徴収すると「また来ます!」と言って佐藤に手を振った。


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