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good communication
【若奥さん 官能小説】

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思い通りにいかなくて-5

「……ね、結構いい映画ね」


ハズレを選んでしまったと思っていた映画が思いの外アタリだったことが嬉しくて、思わず肘で輝くんの腕をツンツン突いてやる。


なのに、彼はノーリアクション。


あれ、もしかしてつまんなくて寝ちゃった……?


不審に思ってこっそり彼の顔を横目で見れば、


「あ……」


と、思わず驚きの声が漏れた。


スクリーンからの光で青白く見える輝くんの横顔。


その瞳がうるうる潤んで、今にも涙がこぼれ落ちそうになっていた。


そうだ。この人、人一倍涙もろかったんだっけ。


その精悍な横顔に、なんだかミスマッチの潤んだ瞳がやけに可愛くて、思わず目を細めてしまう。


感動系のドラマや映画はもちろんのこと、よそ様の結婚式でも必ず涙してた輝くん。


感情移入をしてしまう性質らしく、私達の結婚式では、私が「両親への手紙」を読んでいる横で、私よりも肩を震わせ泣いていた程だ。


女の私よりも涙もろい彼は、人の喜びや悲しみを理解できる、とても優しい人なんだって、すごく嬉しかったなあ。


そして今、子供向けの映画で大の大人が瞳を潤ませている様子に、あの頃抱いた愛おしさがふと込み上げてくる。


そうだ、私は輝くんのこんな所が大好きだったんだ。


お目当ての映画は観ることが出来なかったけれど、この映画も結構いい話だし、彼の純粋な所を再確認出来たのは、大成功かもしれない。


雨降ってなんとやらって感じかな。


胸がほんわかと温かくなったところで、私は身体を前屈みにした。


今にも涙がこぼれ落ちそうになっている輝くんに、ハンカチを渡そうと思ったのだ。


この映画の展開を予想するに、きっとこのあとに最大の見せ場があるはずだ。


そうなると、すでに限界に達してる輝くんの涙腺は崩壊するに違いない。


そこでさりげなくハンカチをスッと出してあげられたら、きっと輝くんは嬉しく思ってくれるだろう。


そう確信した私は、前屈みになった状態で足元に置いてあるクラッチバッグに手を伸ばした。




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