思い通りにいかなくて-4
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食わず嫌い……と言う言葉が当てはまるのかはわからない。
実際、私はこのアニメのテレビ版を、瑠璃と一緒に毎週観ているから、登場人物についてはほぼわかる。
下品で、おバカで、しょうもない少年の日常生活を描いたテレビ版のイメージのこのアニメ、劇場版もどうせ下らない内容なんだろうな、なんてバカにしながら観始めたのだけれど。
クライマックスが近付くにつれ、私はこの映画に裏切られたことを認めつつあった。
……結構いい話じゃん。
大人をターゲットにした、ノスタルジックなテーマパークが今回の舞台。
子供の頃に夢中になった遊びや文化を再現したテーマパークに、大人達は懐かしのあまり、どんどん虜になっていく。
そう、少年の父と母も。
昔の世界にのめり込んでいく父と母は、次第に仕事や家事をしなくなり、我が子の存在を忘れていく。
少年はそこで父と母の本当の姿を取り戻そうと、立ち上がる……なんて、結構ストーリーはシンプルなものだ。
だけど子供向け映画だけあって、テンポもいいし、わかりやすいし、飽きが来ない。
そして終盤に差し掛かると、普段は小生意気な少年の健気な姿や、父と母の正気を取り戻していくシーン、そして未来を生きようとあがく家族の強さに不覚にも心を打たれてしまったのだ。
家族愛がテーマらしいこの映画。
実際家庭を持った私には、すごく感情移入できる。
そんな風に感じる人は私だけでは無いらしく、暗がりの会場内は、子供がたくさんいるはずなのに、誰一人騒いだりもせずに映画に集中しているようで、時折あちらこちらからすすり泣きが聞こえてくるほどだった。