四人の女-6
久美は建築雑誌でニューグリーンと言う名前を知っていたので一度見たかった。それで上阪するとホテルに宿泊をして、翌日の朝から電車で来て、見学をして廻った。
「素晴らしい団地だ、丘を削って、土砂は関西空港に持っていたのかな、駅前なのに未開発の所がある、買収交渉が上手くいかなかったか」
考えながら見て回ると、丘の上の三階建てのマンションに「売り物件、宝持不動産」とあるのを見付けた。日当たりが良くて広い、三階建てに八軒、贅沢な建て方だ。内部は相当広い。一階が機械室と駐車場。
「宝持不動産営業部 富岡卓治」
名刺を手にして久美はマンションの交渉をしていた。
「あの物件はお買い得ですよ。お家族は何人で?」
「私一人で住みますの、幾らなの」
「二千五百万・・・・・・ローン組めますよ」
「二千五百万ね・・・・・・・・・築何年、何か網かかってんの」
「網って?」
「調整区域のこと」
「いいえなにも」
「何で三階なの、勿体ないじゃないの上が」
「それは・・・・・・・・」
「訳ありね、・・・・・・・・大きな声では言えないが自殺?・・・・・・・・一家心中」
「え?なんで、何処かで聞かれたのですか」
「やっぱり、出るんでしょう、夜中に」
「そ、そんなこと・・・・・・・・・」
「千五百、キャッシュで、今払うから」
久美はその夜からニューグリーンの住民になった。宝持不動産の営業所は大きなスーパーの一角にあり、必要品は総てそこで買うことが出来た。
「スーパー山瀬って名前はダサいけれど大きなスーパーね」
付き合わされた不動産の富岡卓治は、
「お客さんは、口が悪いですね、この店の他四十軒ぐらい持っていますよ、山瀬は」
「そうなの、色々と付き合って貰ってご免なさいね」
営業所の車で購入した物を全部運んでくれた。
久美は、今晩の寝る用意をして、市の中心部の繁華街へ出た。電車の駅はそんなに遠くはない、乗車十五分ぐらいで中心街に出られる。
この歓楽街は鳥取でも名が知れているが、さすがに見事なものだ。久美は電飾が光り輝く街を眺めていた。
「姉さん、うちで働かない、給料は良いよ」
少し年が上そうなきっちり身を制服に包んだ男が声を掛けてきた。
「素人でも良いの」
「姉さんの様な綺麗な美人であれば、座ってて金が入ってくるよ、こっち、一度店を見て・・・・・」
引っ張られていった。
連れて行かれたのは入って左側の事務所であった。男性が二人と女性が二人座っていて、黒服の男に連れられて入ってきた久美を、八つの目が集中した。勝負士の目だ柔道勝負の相手の目を思い出して身が引き締まった。
「ここで働きたいの?」
「昨日鳥取から来まして有名なこの歓楽街を見ていましたら、誘われまして」
「無職の方?」
「私はここの責任者で田代早苗、こちらがマネージャ の湯浅貞治、黒服の真鍋喜充、チーママ 長島百合です、丁度四人で人を探していたところだったんで、良かったら働きませんか」
「私は素人ですよ、とてもこのような華やかな世界ではやっていけません」
「今日は、店に座ってみては如何ですか、見学と言うことで、如何ですかママ」
落ち着いた美人のチーママが言う、田代ママもそれに賛同して、
「そうね、佳枝について貰えばいいね」
「佳枝は、うちのナンバーワンの子で、横について見てみて、それから決めれば宜しいのでは、久美さん」
この二人の女は相当な山を越えて現在があるんだ、久美は判断して、
「ハイ、宜しくお願いいたします」
「久美さん、ここは男の欲望を発散させる場所なのソープランドに次いでエッチ度の高い職場。もう経験済みなのでしょう男と・・・・・・・」
「ハ、ハイ、何とか・・・・・」
「一覧表があるから見といてね、コレ、みんな男が女にする行為、一つの行為をお金を払ってお客は私達ホステスにするの。ソープのように本番はしませんけれどね・・・・・・・・・・」
「色々な行為がありますのね」
「私が見本を見せるからしっかり見ときなさいね。パンティーの替え有りますか」
「ハイ、一応バッグに」
「六時からミーティング、それまでに店に入ればいいの、同伴の場合は電話連絡」