クリスマスの夜に-6
違う。
これは、いつもの気弱で頼りない達也じゃない。
調子が狂う。
いますぐ立ち上がって『調子に乗るな!』と叱り飛ばしてやりたいと思うのに、手足が震えて立つことすらできない。
動けずにいるうちに、そっと頬を撫でられた。
綺麗に整った顔が、すぐ目の前にある。
顔が熱い。
気恥しくて、まともに目を合わせられない。
「すごく震えてる。寒いの? それとも緊張してる?」
「だ、誰が緊張なんか」
「顔、真っ赤っかだよ。こんなマリちゃん、初めて見た」
可愛い。
そう言って、達也は顔を覗き込むようにしながら唇を重ねてきた。
触れ合うだけの軽いキス。
薄い唇は思ったよりもずっと柔らかで、なんだか離れたくなくなってしまう。
そんなつもりはなかったのに、気がつけば両手で達也の肩にしがみついていた。
もっとこちらへ引き寄せようとするように。
「もっとしてもいい? それとも、やめて欲しい?」
「い、いちいち言わせないでよ、馬鹿」
それ以外に、なんと言えばいいのかわからなかった。
あとは黙って目を閉じる。
それだけで、きっと達也には伝わるはずだから。
「うん、わかった」
頬に手をそえて顎を上げさせられ、さっきよりも深い口づけを与えられる。
軽く開いた唇の隙間から、熱い舌が潜り込んできた。
舌を絡められ、ねっとりと口の中を探られているうちに、頭の芯がじんわりと痺れていく。
混じり合う唾液が、お菓子のようにとろりと甘いものに感じられる。
達也の腕の中はひどく居心地がいい。
意地を張っているのが、ばかばかしいことのように思えてくる。