果-4
歪みがゆっくりと直ると、今度は坊ちゃんが一人で部屋にいた。
「坊ちゃん。旦那様がお呼びですよ」
坊ちゃんは何かのパーティーなのだろうか?
きちんとした燕尾服を着ていた。
「その旦那様から逃げているんだよ。みを」
「坊ちゃん・・・・」
「ごめんね。みを。僕はどうしても飯塚のご令嬢と
結婚しなければならなくなりそうだ」
坊ちゃんが辛い顔でみさをに謝った。
「そんな。坊ちゃん。ちゃんと分かっています。
先日。坊ちゃんが好きだって言ってくれただけでいいんです」
「うん」
「お気持ちだけ。ありがとうございます」
「僕は、みをに気持ちしかやれないんだな」
「坊ちゃんが飯塚のお嬢さんとご結婚なさらないと・・・」
「大久保の爵位は政府に返上することになるね。
今の大久保では男爵家を継続させるほどの財力がない」
「そんな事になったらご先祖様に申し訳ないです」
「大久保の家に財力がないばかりに。ごめんね」
「とんでもない。もったいないお言葉です」
椅子に座って、庭を見ながら坊ちゃんは泣いていた。