果-2
「気にするなよ」
「手をつなぐならあんみつは食べにはいかれません」
「分かったよ」
ふたりは無言で歩き出した。
坊ちゃんの数歩後をみさをが歩いてついていった。
「みさをはあんみつを食べているときは幸せそうだな」
何もかもこの瞬間以外なくなればいいのに。
そう言った坊ちゃんの顔が悲しそうに微笑んだ。
2人を見ていて沸き起こった何とも言えないさみしい感情を
私はどうすることもできなかった。
一体ここは何処なんだろう?
私が見ているものは何だろう?
今の・・・日本ではないような・・・
そのうち私の見ている場面が大きく歪んだ。
ぐにゃりと歪んだ空間がゆっくりとほどけていき
次に現れたのは
どうやらあの屋敷の中の部屋のようだった。
「みさを!今日会った伊太利亜の商人に面白いことを聞いてきたぞ!」
仕事先から帰ったのか坊ちゃんが興奮してみさをを呼びつけた。
「なんですか?」
二人共少し大人になってる。
さっきの場面から時間が経っているのかな?
「伊太利亜語でミオとは『私の』という意味らしい。通訳が言っていた」
「はぁ・・そうですか」
「みさを。みさをのことをこれから『みを』と呼ぶことにする」
「え!」
「僕のという意味だ。これなら誰にも分からないだろう」
「坊ちゃん」