晒された少女-3
「さて、こうやって盗んだ、盗んでないを繰り返していても埒があかない。そうだろ?」
腰に手をあてて、サヤカはまたぷいと横をむいた。
見上げた強情ぶりだが、あわてふためくところはまだ幼い。
こうして補導されても、
「で?それが何か?」
をひたすら繰り返して、持久戦をしかけてくるスレた子供が、この街にはいくらでもいる。
まあ、それはそれで“オトナ”として対処のしようはあるのだが……。
「俺達もこれでなかなか忙しいんだよ。オイタをしてくれるヤンチャな子が大勢いるんでね。さて、そこで提案なわけだが」
サヤカはまだ横を向いていたが、耳を傾けているのが雰囲気でわかった。
彼女は彼女でこの窮地をどう切り抜けるか、考えあぐねているのろう。
「俺達はなるべく効率的に仕事したいんだな。なにせ万引きよりタチの悪い連中がごまんといるんだ」
生徒手帳を見るふりをしていた“主任”は、サヤカがちらり、ちらりと二度、横目で興味を示したのを見逃さなかった。
「実は俺たちも、真犯人は別にいるって気がしてるんだよ。ただピアスをひとつ盗んだのは事実だから、他も疑わなきゃならん立場なわけだ。わかるだろ?」
「………」
「で、提案だ。本来よくないとこなんだが、今回だけは特別に目をつぶるってことにしようじゃないか。但し、ある条件をクリアしたら、だがな」
言いながら“主任”は組んだ手に顎を乗せた。
サヤカはまだそっぽを向いていたが、やがて堪えきれなくなったのか、
「……条件って?」
ぶっきらぼうにそう訊いた。
「なに、難しいことじゃないさ」
ここで“主任”はがらりと口調をかえた。
「確認しておくが、本件はきわめてデリケートな要素をもつ事案だと理解してほしい。本来、我々警察官は職責上、粛々と手続きをすすめなければならん……つまり、君を犯罪者として扱う義務がある」
堅苦しい語り口だが、つまるところは、
『言うことをきかなければ、容赦なく親に電話するぞ?』
という脅しだった。