ルームメイト-5
「はァ……はァ……」
荒い息だけが聴こえていた。
ナオキはぎゅっと目をつぶったまま、眉を寄せた顔をそむけている。
瞼をきつく閉じているのは、たとえほんの僅かでも、自分に降りかかっている現実から目を背けようとする本能だろうか。
だが……。
「あっ」
次の瞬間、吐息にも似た悲鳴とともに、その目が大きく見開かれた。
下着の内側をまさぐっていた手が引き抜かれるや、下着ごとスウェットパンツを引き下ろしたのだった。
「いやだ!いやだぁ!」
ナオキは両足をばたつかせた。
両腕は依然として頭上に拘束されていたが、足をつかった抵抗にはアキオも手を焼いたものとみえて、両手をかけてスウェットパンツを引っ張りはじめた為に、結果的に解放されることになった。
スウェットと下着は膝上あたりまで下ろされていたが、ナオキもこれに両手をかけて、それ以上を必死に阻止しようとした。
だがここでも力の差は絶望的だった。
しばらく抵抗してみせたが、結局のところエビのように身体を折ったまま、殆ど姿勢を逆さまにされて、天井に向かって突き出された足先から身につけた最後の着衣を抜き取られ、あえなくベッドに転がされたのだった。
「く……!」
理不尽な力によって無理やり一糸まとわぬ姿にされたナオキは、ベッドの上に起き上がり、羞恥と屈辱に唇を噛みながら、胸元と下腹部を細腕で隠した。
壁際に後ずさりながらも、気丈にも憤怒の眼差しで相手を睨みつける。
ナオキが胸元を隠したのは、単にアキオがその部分に異常な執着をみせていたからでしかない。
だが、その仕草は彼が持つ中性的な美しさを、よりいっそう増してしまっていることに、彼自身は気づいていなかった。
アキオは躍りかかった。
細い手首を掴み腕を広げさせて押し倒すと、胸といい腹といい、首筋から脇腹、腰、内腿といい、全身をくまなく舐めまわした。
もちろん嫌悪感に歪む顔面も、悪夢のような舌と唇の洗礼を免れなかった。
耳元、こめかみ、頬、目蓋、鼻筋、そして唇……。
髪を振り乱して右に左に逃げる唇を、しつこく追い回された挙げ句に、頭部をがっしりとした手でホールドされ、ふたたび覆い尽くすようにして重ねられる。
「む、ぐ……!」
ナオキは両腕を突っ張って相手を押し退けようとした。