ルームメイト-6
「んん……」
ナオキは彼なりに渾身の力で厚い胸板を押し返した。
だが、のしかかるアキオの巨躯はびくともせず、むしろ一層の圧力で彼の健気な抵抗を動きを封じていた。
今度は引き結んだ唇を割って、生暖かい舌が侵入してきた。
先程にも増してねちっこく穢らわしい接吻だった。
アキオは入り込ませた舌を動かして、食いしばる小さな歯列をしゃぶりはじめた。
「んぐ、あ……」
吐き気がした。
ナオキは堪らず顎を弛めてしまった。
アキオの舌は、こじ開けた歯の隙間からさらに奥深く侵入して、口中をくまなく蠢きまわった。
余りの気持ち悪さに吐き出そうとしても、かえってざらつく舌がからんできて、口腔を掻き回される。
ナオキにできるのは舌を動かして、しつこくからんでくる侵入者から逃れることだけだった。
ナオキの相貌は苦痛に歪み、頬にあたる生暖かい鼻息が、こめかみのあたりにかかる髪を揺らしていた。
だが別の場所では、彼にさらなる苦悩を強いる悪夢のような所業が行われようとしていた。
がっちりと押さえ込んでいた手が離れ、苛んでいた口吻とともに身体の下方へと移動していった。
「………！」
首筋や乳首に、もう何度目になるかわからない口付けがまた繰り返されたが、ナオキはもうそれにはさしたる痛痒を感じないほどに混乱し、感覚を麻痺させられていた。
しかし続くアキオの行動が、受け入れがたい現実にナオキを引き戻した。
ねばつくような舌が鳩尾から脇腹のあたりを這っていたが、その先でベルトを外す音がする。同時に片方の膝裏に手が差し込まれ、担ぐようにして両脚が拡げられようとしていた。
何が始まろうとしているかは明らかだった。
獣欲にとり憑かれたアキオが、受け入れる体勢を取らせようとしているのだった。
「いやだァ！それは、それだけはいやだァ！」
ナオキは肘をつかって後ずさり、その最悪の仕打ちから逃れようとした。
「頼む。頼むから！」
アキオは返事もしなかった。
聞こえていないのかもしれない。
ただ血走った眼をぎらつかせて、膝でにじり寄ってくる。
横着にもズボンを腿の付け根あたりまで降ろしただけだが、目的を果たすにはそれで充分なのだろう。
というよりその邪な目的のみが、今のアキオを支配していた。