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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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卒業-1

【卒業】

雄一の全国大会から数カ月後、悠子達の大学卒業が近づくにつれて、明るかった悠子の表情は成りを潜め、昔のように塞ぎ込む事が多くなった。当然ながら姉の事には敏感な雄一は、悠子のその様子を心配した。

「姉ちゃん、どうした?アニキとケンカでもしたのか?」

「ううん、大丈夫よ。ケンカなんかしてないよ」

直ぐに明るく装う悠子だったが、雄一には悠子が無理をしているように見えた。

「無理すんなって、アニキにはオレが取りなしてやるよ」

「そんなんじゃないよ…」

悠子は答えながら俯いた。姉の様子に、何か有るなと雄一は感じた。

「アニキじゃないなら、家の人に何か言われたのか?」

悠子と星司が長年付き合っている事は、当然星司の両親も知っている。その両親から、家柄の違いでも言われたのかと思い、更に突っ込んで聞いたが、これがいけなかった。

「だから、そんなんじゃないって言ってるでしょ!放っといてよ!」

雄一の言葉が何かに触れて、悠子は珍しく声を荒げた。

「姉ちゃん…」

「ご、ごめん…。家柄とかじゃないの。でも、しばらく一人で考えたいの…」

悠子の思い詰めたような表情を見て、雄一はもう黙るしかなかった。暫く様子を見る事にして、無理やり自分を納得させて引き下がる雄一だった。

しかし、2、3日経っても、悠子の状況は変わらない。それどころか益々悪くなっていく一方だった。一向に好転しない状況に雄一が我慢できるはずもない。

「姉ちゃん、一体何が有ったんだよ!」

堪らず聞いた結果、前回以上のギスギスしたやり取りをする事になってしまったのだった。

以降も、同じ事を繰り返す内に、仲のよかった姉弟の関係は、どんどんギクシャクするようになっていった。

悠子の落ち込みが、各務家に起因すると確信した雄一は、その各務家に乗り込む事まで考えたが、自分の行動が、悠子の立場を更に悪くする事を恐れ、何もできないまま、悶々とした日々を過ごす事になった。

この各務家が起因しているとの雄一の考えは、ある意味で的を射ていたのは事実だ。しかし、その起因の種が、雄一が考える以前から蒔かれていた事までは想像が及ばなかった。

悠子が星司と付き合い出した当初から、折に触れて星司の自宅に招かれ、星司の両親にも幾度となく会っていた。

気さくな両親には、初めの頃は歓迎されていたが、それが何度か会う内に、徐々に他々しさを感じるようになっていった。

自分としては、気が弱いなりに、精一杯接していたつもりだったが、それが伝わった気がしなかった。その事が気になった悠子が、それとなく星司や陽子に聞いてはみたが、星司にしても、陽子にしても各務家の秘密は、中々口にできるはずもなく、『気のせい』としか答えようがなかった。

結局この時の悠子は、長男の彼女に対しては、世間一般の親達は、得てしてこのような態度を取るものだと、無理やり自分を納得させるしかなかった。

星司の能力と、各務家の実態を初めて告白されたのは、大学生活4年目の夏、雄一の全国大会が終わって直ぐの事だった。星司としては、大学卒業後に結婚をしたい思惑もあってのこの時期での告白だった。

本来ならば、親族会議の同意が無くては、話してはいけないはずの星司と各務家の秘密を、星司は独自の判断で悠子に話した。

「そうなんだ…」

その驚くべき告白を聞いた悠子は、ただポツリとそうつぶやいた。

「驚いた?」

星司は申し訳なさそうしながら、悠子にわかりきった事を聞いた。

「う、うん…」


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