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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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卒業-2

星司がよく気が付く人だとは付き合った当初から思ってはいた。時には異常とも思えるような気配りに、同年代の男子に比べて、大人の男の頼もしさを感じていた。

しかしその実態は、同年代と比べた『資質』といった単純な事ではなく、それらを遥かに超越した事だった。『気持ちを汲んでくれる』といった次元ではない。自分の心の中が、そのまま他人に読み取られる行為は、本来ならば人として許容できない事だ。

自分の気持ちが筒抜けになっていたかと思うと、悠子は今更ながらに恥ずかしくて堪らなくなった。

「厭になったか?」

「えっ?」

そう聞かれて、あらためてその事を考えてみたが、戸惑いは感じつつも、不思議と星司を嫌悪する事はできなかった。

元々星司に対しては、安心して自分の弱さを曝け出していたので、悠子が思ったのは、やはり『今更』だった。

いつも自分の事を一番に考えて行動する星司に、とても感謝もしていたし、振り返ってみても、能力を使って弱さに付け込まれたと感じた事は皆無だった。

それよりも、信頼する星司にそれが有った事で、今までの自分は助けられていたんだとまで、悠子は思い始めていた。

「そんなに嫌じゃない…」

その答えの通り、悠子に『戸惑い』は感じたが、そこに『嫌悪感』を感じ取れなかった星司は、ホッと安堵した。

「でも、どうして今なの?もっと早く言ってくれても嫌いになったりしなかったよ」

それに対する星司の答えは、いつ告白するか散々悩んでいたとの事だった。悠子もバカじゃない。星司が悩んでいたと聞いて、それもやはり自分の弱さに原因があるんだと直ぐにわかった。不安定な自分にどんな影響を及ぼすのかを恐れていたのだろうと、容易に想像がついた。

同時に、各務家の能力と自分の弱さ故に、各務の両親の他々しさを招いていた原因にもなっていた事に気付いた。弱い自分には各務家での生活が耐えられないと、両親に見抜かれている事に。また、悠子がそれに気付く事も星司が恐れていた事にも、あらためて気付かされた。

星司には抱かない嫌悪感を、他の親族に抱かない自信は悠子には無かった。

(あたしの事で揉めてる…)

悠子の直感だった。自分を巡って、気の良い両親と星司が揉めている事まで想像して、悠子は心苦しくなった。

しかし、この時は卒業までにまだ時間が有った。結局、まだまだ若い2人は、将来の事を心配するよりも、『今』の時間を大切に共有する事を望んだ。

悠子は今まで以上に星司との逢瀬に身を任せ、星司も悠子を愛する事で少しでも不安を解消させようと、2人の行為に励んだ。

こうして、星司のリードに身を委ねる事で、悠子は心の平静を保てる事が出来ていた。

しかし、それも長くは続かなかった。卒業が近付くに連れて、各務の家の事がヒシヒシと現実味を帯びてきて、悠子の心の平静は、徐々に乱れていった。

「あたしもそう思うわ。星司くんとの結婚に自信が持てないのよ」

思いつめた悠子が、心配を口にしても、星司はいつもの優しい笑顔で答えた。

「大丈夫。僕に任せて欲しい」

その笑顔、それに続く抱擁で一旦は安堵を覚えるが、星司と離れると直ぐに不安に苛まされた。



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