おっさんの純愛-5
『皆さんには分からないように渡しますよ。ね?』
ヒョイっと下から覗きこまれ、スオウの顔が一気に茹で蛸のように赤くなった。
『む……ぬ……』
『アッハッハ、だから照れなくて良いですよっ。甘いもの好きでも良いじゃないですか。団長さんったら可愛い♪』
今度はスオウの頭から湯気まで発生した。
今まで恐がられたり、逃げられたりされた事は多々あったが、面と向かって『可愛い』など言われたのは初めてで……。
『ふふっ中庭で待っててくださいね』
ミウはくるりと前に向き直り、鼻歌混じりで歩きだした。
『むぅ』
今まで普通の女性にこんなに親しくされた事が無いスオウは、どういう態度を取れば良いか分からずに戸惑いつつも、悪い気分ではなかった。
翌日からミウは約束通りお菓子を持ってきてくれた。
残りが無い時はコッソリ作ってくれたりしてくれた。
休みが合う時は3人でスイーツ店巡りをしたり……。
「は?そこまでやっといて手ぇだして無いんですか?」
城下町の喫茶店の中でキャラの呆れた声が上がる。
キャラの前に座っているスオウは巨体を縮ませてそろっと横を向いた。
いきなり話があると呼び出されたのは城下町の喫茶店。
そこで一連の話を聞いたのだが、キャラには信じられない位に遅い進展だ。
「ぬ……ミウ殿はご主人を亡くしたばかりだしの……まあ、なんだ……寂しさが少しでも埋まれば良いかと……」
「あ〜…まあ……そりゃ、そうですけど……」
確かに、スオウの性格上寂しさにつけこんで……とかは無理なのだろう。
「それで?わざわざこんな所に呼び出したのには他に理由があるんですよね?」
からかわれるのが分かっておいて秘密をバラしたのだから、何か重要な理由がある筈だ。
すると、目の前のスオウが耳まで赤くしてモジモジし出した。
「ぬ……その……もうすぐミウ殿の誕生日だとリオに聞いてな……」
「ああ、何を贈ったら良いのかと……」
キャラの言葉にコクコク頷くスオウ。
ゴリラの様な風貌のデカイおっさんに、そんな乙女チックな仕草をされても正直気持ち悪いだたけだ。
キャラは嫌な顔をして渋った返答をスオウにする。
「ん〜…それ、オレに聞きます?」
キャラの言葉にスオウはふっと顔を上げた。