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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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ふがいないや-2

歩仁内兄弟が、バーベキューコンロに炭をおこして、沙織と石澤さんと本間さんが野菜を切り、俺と修がテーブルや椅子を組み立てる。


沙織の側に州作さんがいないこんな時こそ、話しかけるチャンスだと言うのに、ヘタレな俺は勇気を出せない。


そのくせ沙織の一挙手一投足ばかり気になって、チラチラ横目で窺ってしまう。


一見、石澤さんと本間さんと楽しげに話をしながら野菜を切ってる彼女の姿がチラチラ見えるけど、いつもの沙織の笑顔じゃない。


どこか空元気の笑顔に、早く前言撤回しなければ、と焦る。


「倫平」


低い声に我に返ると、折りたたみの椅子を並べ終えた修がこちらをじっと見ていた。


その顔が、やけに真剣な顔をしているから、怒られそうな気がして目を背ける。


「……何だよ」


「お前、沙織に“別れよう”って言ったらしいな」


ギクと、身体が強張り、クーラーボックスからペットボトルを取り出す手が止まる。


次に何を言われるのか、じっとり背中に嫌な汗が滲み始める。


修、それは俺の言葉のアヤなんだ。


そう言いたかったけど、唇が金縛りにあったみたいに動かない。


俺にとっては言葉のアヤでも、沙織からすれば別れを言われたことは紛れもない事実で、傷をつけてしまったのも事実。


責められる……だろうな。


傷つけられても気丈にふるまって笑顔でいようとする沙織の胸の内を想像すると、俺だって自分のことが許せない。


特に修は、俺が沙織に片想いしていた頃から応援してくれていたから、一時の気の迷いで沙織を泣かせてしまったことにムカついているかもしれない。


修の顔が見れなくて、ただ俯いて黙っていると、はあ、とため息を吐く音が聞こえてきた。


そして、


「悪かった、倫平」


と、謝る声が聞こえて来たから、思わず顔をあげると、そこには申し訳なさそうに口を尖らす修の顔があった。




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