第一話-3
自分の部屋に戻った私は、逆に不機嫌だった・・・
(何だよ、高校何か落ちたら恥ずかしくて外歩けないって・・・)
母は、自分の面子の事しか考えていないように思えていた。この時の私は、散々小言を言われ続け、些か理性を欠いていたんだと今では思います・・・
(だったら・・・本当に恥ずかしくて外歩けなくしてやろうか?)
そんな感情が沸き上がっていました・・・
(そうだ!昼間のおじさんを・・・)
私の中の悪魔が目覚めた瞬間でした!
私は下に降りると、食器洗いをしていた母に、
「ヤベェよぉ・・・俺、生徒手帳あの廃工場で落としたみたい」
「エェェ!?」
「俺、ちょっと捜してくる!」
「アッ!?ちょ、ちょっと待ちなさい!!」
私の嘘の告白に呆然とした母、私が捜してくると家を飛び出すと、母は動揺しているようだった。
空は曇天、天気予報では、また夜に激しい雨が降るような事を言っていたので、念の為傘を持って行きました。母が直ぐ追って来るかも知れないと思いつつも、途中で昼間のお詫びも兼ね、何かを持って行こうと思いましたが、酒やたばこを中学生が買える筈もなく、私は屋台の焼き鳥屋で、数本焼き鳥を買って行きました。
(取り敢えず、謝れば殴られる事は無いと思うけど・・・)
廃工場に着き、恐る恐る昼間の場所まで進んで行くと、奥からブツブツ言っている、浮浪者のおじさんの声が聞こえていました・・・
「ったく、あいつら・・・ハァハァ」
おじさんの息遣いは荒く、そっと様子を伺うと、浮浪者のおじさんは、昼間母を襲い損ねたモヤモヤを晴らすように、エロ本を見ながら自慰をしているようだった。私は意を決し、
「こ、こんばんは!昼間はどうもすいませんでした!!」
「ン!?・・・お、お前は!?良くもヌケヌケと現われやがったな!!」
おじさんは怖い顔で立ち上がるも、私が昼間のお詫びに焼き鳥を差し出すと、まあこっちに来て座れと、薄汚れた折りたたみの椅子を差し出してくれました。
「まあ、素直に謝られちゃ、こっちも許さなきゃなぁ・・・しかし、お前の母ちゃん思い切った事しやがるなぁ?玉が潰れたかと思ったぜ!?」
「いやぁ、家のおふくろ、気が強い所があるから・・・」
「でも、良い身体してたなぁ・・・年はいくつだ?」
「42歳!」
「42かぁ・・・俺の好みだ!」
おじさんは、昼間の母のスリップ姿を思い出したかのように舌なめずりした。母を褒められ満更でも無かった私だが、
「あんなポッチャリ体型でも良いの?」
「おいおい、あれぐらいならポッチャリ何て言わねぇぞ?」
おじさんは苦笑を浮かべながら私を窘めた。私は口元に笑みを浮かべると、
「フ〜ン・・・お袋、また此処に来るかもよ?」
「な、何!?本当か?」
母が此処にまた来るかも知れない・・・
私がそう言うと、おじさんの表情はパッと明るくなった。だが直ぐに、あんな目にあったのに、本当に来るのかというような表情を浮かべたので、
「うん!俺、此処に生徒手帳落としたから、お袋に捜してくるって言って此処に来たし・・・」
「エッ!?そんなものあったかなぁ?」
おじさんが小首を傾げていると、私は徐にポケットから生徒手帳を取りだし、
「嘘だよ!此処にお袋誘き寄せようかなぁって思ってさ!」
おじさんは驚いた表情を浮かべると、
「な、何でまた?」
私はおじさんに、三者面談の事でグチグチ小言を言われた事を話した。母に仕返しって訳じゃ無いけど、少し懲らしめてやりたいと伝えると、おじさんはニヤリとし、
「そういう事なら、俺も協力してやるぜ?」
「ほ、本当!?」
「ああ、その代り・・・俺の好きにさせてもらう!!」
「エッ!?・・・う、うん」
昼間の事を思い出し、少し躊躇した私だったが、おじさんの言葉を聞き入れた・・・