莟の既視感-1
幼気なスリットは延々と舌先に舐られ、受容れはじめていた。
本来は知り得るはずのない“悦び”の記憶。
磯崎汐莉と呼ばれし少女にも、等しく既視感に似た記憶が呼び起されはじめようとしていたのだ。
「おっ おなかの奥がっ おなかの奥があついっ よおぅっ!」
その言葉の直後、汐莉は幼い身体を戦慄かせるように果てた。
「汐莉ちゃん、“ミルク”の事知ってる…… よね?」
数秒の間隔をおいて、ぐったりとする少女の耳元で囁く。
《莟(つぼみ)》
そう、あの時まで、汐莉はまだ莟だった。
姉の家を再び訪ねたその日、俺は本来の目的を果たせず、ただ深い焦燥感の中にあった。
(いま、こうしている間にも…… )
そう想うと居ても立ってもいられず、姉の家へと訪れていた。
これは不易一文の内に巣食う淫欲の記憶。
かつて存在したであろう磯崎一史(いそざきかずふみ)と呼ばれし、姉妹たちの叔父の穢れし淫欲の記憶と言える。
《汐莉 愛姪調教 11歳の誘惑(抄)》
「お兄ちゃん、お兄ちゃんってば…… もっと遊ぼうよ」
そう言いながらまとわり付いてくる少女はとても可愛らしいが、流石に4時間近く相手にしていると辛い。
何と言っても相手はまだ小学五年生、全く持って煩わしく限度を知らない。
俺は子供相手に延々とくだらない格闘ゲームに付き合わされ飽き飽きしていた。
もっともその原因の一部は俺にもあった。
少女がゲームに飽きない様に、微妙に勝敗をコントロールしていたからだ。
要は勝てそうで勝てない事を演出していたのだ。
それに俺は少女の兄では無く叔父である。
少女は姉の娘で、つまり俺にとって姪にあたる存在。
つまり“叔父さん、遊ぼうよ”が正しい表現である。
「もっと、もっと遊んでよ」
そんな俺をよそに、少女の攻勢は激しさを増す。
(もっと、もっと、かぁ……)
その言葉、願わくば少女の姉の口から聞きたいものである。
今年16歳になる少女の姉、その容姿は清らかで愛らしい。
「ねぇっ、ねぇってば、お兄ちゃん」
「もう、これだから子供は!」
俺を現実世界に引き戻す声にイラつき、つい子供相手に本音が出てしまう。
「子供じゃないもんっ」
子供でも本当の事を言われる怒るらしい。
少女は顔を真っ赤にしながら絡みついてくる。
「それじゃ、大人の遊びをしよう。大人はゲームをする時、お金を賭けるんだよ。だから負けが続くとお仕舞いになる」
いい加減ウザったくなった俺は、反撃攻勢に出る事にした。
「だって汐莉、お金持ってないもん」
少女は拗ねた様な表情でこちらを睨む。
もっともそんな事は最初から解って言っている。
単純に解放されたいから言ってみたのだ。
「ずるいよ、ずるいよ」
そう思ったのも束の間、少女は更に喚き散らす。
まぁ、確かに小学生相手に金銭を要求するふりをするのも後味が悪い。
いっそ無理難題を言って、大人しくさせるのが得策か?
「ごめん、ごめん、そうだね、お金はまずかったね。でもね、大人は勝負に負けたらペナルティーを支払うもんなんだよ」
「ペ、ペナルティー?」
少女が不思議そうに小首を傾げる。
その仕草はどことなく少女の姉を連想させる。
まぁ、姉妹だから当然と言えば当然である。
「ん〜、何て言ったらいいかな? 罰、そう、罰ゲーム。そう、嫌な事を引き受けなくてはならないんだ」
我ながらかなり適当な説明である。
「それじゃ、汐莉ちゃんが負けたらお兄ちゃんの言う事聞くよ」
少女はそれを条件に遊んでもらえると喜々とする。
「言う事聞くって、言われてもなぁ?」
姉の家を訪ねた本来の目的も果たせず、こんな目に遭うとは全くもって“とほほ……”な状況である。
イラつきが極限に達した俺は、次の瞬間トンでもない事を口走っていた。
「汐莉ちゃんが負けたら…… 5回負けたらパンツを見せるんだ、10回負けたらパンツを脱げ」
我ながら馬鹿な事を言ったものだ。
もっともこれで諦めて解放されるであろう。
「でも4回目で止めるなら、何もしなくて良いよ」
小学生相手にエロい事を言った気恥ずかしさから、照れ隠しにそう付け加えてみる。
少なくてもこれであと4回相手にしてやれば解放される。
「…… えっちな事言えば汐莉が諦めると思ったんでしょ」
一瞬複雑な表情をするも猛然と挑んでくる様子は、流石気の強い姉貴の娘である。
まだ幼くても、その血はあらそえない。
「いいのか、泣いても許してやんないぞ」
その表情に幼少期の姉がダブってしまい、こちらも大人気なく挑発してしまう。