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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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ホワイト・ライ・クリスマス-3


***

(うあああああっっ!! 何言い出すんですかっ、ラクシュさあああんっ!!!)

 アーウェンは盛大に冷や汗をかきながら、心の中で絶叫していた。

(そ、そんな事したら、プレゼントを渡してたのは俺だったって、バレちゃうじゃないですかーーっっ!!!)

 その昔、サンタクロースという空想上の存在を聞き、その名を語ってラクシュにクリスマスプレゼントを渡そうと思いついたのだ。

 あの頃、アーウェンはすでに一人前の人狼へと成長し、危険な遺跡探索も容易に出来るようになっていた。
 それは弱りきっていたアーウェンを買い取り、きちんと養ってくれたラクシュのおかげだ。
 だが彼女の方はなぜか、まるでアーウェンの成長と比例するようにやつれていく。
 そんな彼女を見るのは、いつも心が痛んだ。ラクシュに少しでも、楽しい思いをして欲しかった。

 もうアーウェンは鉱石を採りにいく時、ラクシュに頼まれた分より少し多めに採ったり、遺跡の発掘品を見つけたりして、自力でも稼げるようにはなっていた。
 それはラクシュもちゃんと知るところだ。
 ……にもかかわらず、わざわざ回りくどい手段をとろうと思ったのは、アーウェンが直接にクリスマスプレセントを贈ったら、ラクシュは喜ぶよりも、すまなさそうに受け取るような気がしたのだ。

 当時はまだ、ラクシュが自分の血を欲しているなど知らなかったが、ラクシュからどこか、自分に対する引け目のようなものを感じ取っていたせいかもしれない。

 だからアーウェンではなく、皆にプレゼントを配るのが役目の、サンタクロースという存在からだったら、ラクシュも気負い無く受け取れるだろうと考えたのだ。

 ラクシュにだけプレゼントが届いたら不審がられるかもしれないから、自分用にも必要な台所用品などを適当にラッピングして、貰ったように見せかければいい。
 それをクロッカスに打ち明けて相談すると、 『お前は墓穴を掘るタイプだな。止めても無駄だろうから、気の済むようにしろ』 と、呆れられた。

 あの時は、わからずやのおっさん猫め、と腹を立てたが、遅まきながらあの言葉を痛感する。
 理由はどうあれ、アーウェンはラクシュを騙していた。
 そして今やその嘘は、すっかりサンタクロースの存在を信じ、きちんと礼を果たそうというラクシュの誠意を、台無しにする結果となりつつあるのだ。

「え、えーと……でも、ラクシュさん……それは止めたほうが……」

 視線を彷徨わせながら、もごもごとアーウェンは呟いた。
 『サンタクロースからのプレゼント』は、今年もちゃんと用意してある。
 だが、アーウェンが今年もこっそり屋根に昇り、ラクシュの部屋の窓下へとプレゼントを投下したら、その瞬間に掴まるだろう。


 非常に不本意だが、今のラクシュと追いかけっこをした場合、アーウェンの勝ち目などゼロだ。


「あー……なんていうか、俺が考えるに……サンタクロースは、あまり姿を見られたくないんじゃないかと……」

 必死で言い訳を紡ぐと、ラクシュは小首をかしげた。

「ふぅん?」

 抑揚のない声は、あまりアーウェンの言葉を信じていないように聞こえた。
 ギクリ、とさらにアーウェンは冷や汗をかく。

 ―― もしかしたら……いや、確実に、もうバレてます!?

 しかし、ラクシュは雪色の髪を揺らしてコクンと頷いた。

「そっか……君が、そうしたいなら……止める」

 そう言うとラクシュは、何ごともなかったように、セロリのスティックをパリパリと齧り出した。

 アーウェンはと言えば、身じろぎもできずにいた。
 今のセリフは、ラクシュが『サンタクロースの』正体を見抜いた事を、十分に示すものだ。
 その上で彼女は、アーウェンの気の済むようにと、不問にしようとしている……。

 ―― 罪悪感に、見事なとどめを刺された。



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