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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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D.-7

『3階です』
エレベーターが喋る。
ドアが開くが、降りる気になれない。
「3階なんだろ?降りたら?」
瀬戸が出口の方を顎でしゃくった。
なんか癪に障る。
湊は不快感に浸りながらエレベーターから降りた。
瀬戸はそのまま9階まで向かうのかと思いきや、一緒にエレベーターを降りた。
思考回路が謎すぎる。
瀬戸は眉を吊り上げて湊を見た。
自分と同じくらいの身長だ。
「五十嵐湊?」
「は?何で知ってんすか、俺の名前」
陽向が言ったのか?
瀬戸は「いや、名札」と言ってリュックのメッシュポケットに入っている名札を見て平然と言った。
レストランで使っている名札だ。
オーナーの趣味でフルネームで記載することになっている。
湊は瀬戸を真っ直ぐ見据えた。
瀬戸も湊を見る。
「連れて行きたい場所がある」
瀬戸は静かに言うと湊に「着いて来い」と言って脇にある階段を降りた。
訳が分からないままその背中を追い掛ける。
エントランスの扉をくぐり抜け、瀬戸は自分の車の助手席に湊を乗せた。
「どこ行くんすか」
瀬戸はその言葉を無視してアクセルを踏んだ。

目的の場所に着いたのは1時半。
見慣れた赤と青の電光掲示板は「Kid」の文字を点滅させている。
木のドアを開けるとカランコロンと煩わしい音が耳を劈いた。
「こんばんわ」
「いらっしゃい……って薫じゃねーかよ。また飲み来たんか」
オーナーと思しき人が茶々を入れる。
10組も入れないであろうこの狭い空間。
年季の入った数々の古い木造家具。
あらゆる場所に置いてあるステンドグラスで出来たランプ。
静かに流れるロックともとれるジャズ…。
「…薫。湊と知り合いだったの?」
「いや。今日たまたま会って。…住んでるマンション、一緒っぽい」
「あー、武蔵山の」
「東武蔵山な」
「はは、どっちでもいーわ」
オーナーはケラケラ笑った。
「航、とりあえずビールくんない?2つ」
瀬戸はそう言いつつ「ビール飲めるっしょ?」と聞いてきた。
「はは。湊はビール飲んでばっかだよ。coronaが好きなんだよな?仕入れすぎちまったから、丁度良かった」
オーナーは冷蔵庫からcoronaの瓶を取り出し、湊に渡した。
左胸の名札には『五十嵐航』の文字。
「兄ちゃん。よくご存知で」
「あたぼうよ」
航は湊の髪をぐしゃぐしゃ撫でた。


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