近所の小説家-1
官能表現よりも、コメディ要素重視ですので、苦手な方はスルーして下さい。
【近所の小説家】
「はあ、はあ、はあ」
薄暗い部屋の中で、その男が荒い呼吸を繰り返していた。
そこへ突然、その男の馴染んだ薄暗さが破られる事が起こった。明るい光が部屋に差し込み、物語は始まって数行目で急展開を迎える事になった。
「ただいまあ。あら、あなた、何読んでるの?」
部屋に籠りきりで、何故か布団の中で横向きに読書に熱中していた夫の背中に、帰ってきたばかりの妻が声を掛けた。
「ビクウッ……、サ、サセエ、お、お帰り…、は、早かったんだね…は、ははは…」
マスゾウは本に集中する余り、出掛けていたサセエが帰って来たのにも気づかなかった。妻の突然の呼び掛けに驚き過ぎて、いつもよりも増して、挙動不審な態度を取ったマスゾウだった。
夫の挙動不審は毎度の事なので、サセエはそれにツッコミを入れることなく、気になる事を聞いた。
「それ、なあに?小説みたいだけど…」
サセエが覗き込もうとしたので、マスゾウは慌てて、読んでいた本を布団の中に隠した。
「な、何でもないよ」
「まあ、怪しいわね!まさかエッチな本を読んで、一人でセ○ズリでもコいてたんじゃないでしょうね!」
サセエの怒鳴り声が、近所中に鳴り響いた。
「ギクウッ!そ、そ、そ、そ、そんな事するわけないだろ」
まさしく、そんな事の真っ最中だった。
しかも、次ページに続く濡れ場の場面で、フィニッシュを迎えようと思っていたところだ。それまでの激しかった扱きを抑え、人差し指の腹で亀頭の裏を絶妙なタッチで撫でまわしながら、場面によって射精感をコントロールするマスターベーションでは一番大事な時だったのだ。
しかし、悲しい事にサセエの突然の声掛けに、微妙なコントロールが狂ってしまった。
マスゾウは小説の中の【そり返った男根は使い込まれた分赤黒く変色していて、先から溢れた液体が亀頭全体を濡らし、より一層生々しさが増していた。『ふぇふぇふぇ。ワシのチ○ポもまだまだいけるじゃろ』】の部分でフィニッシュを迎えてしまったのだ。
マスターベーションする男にとって、【男根】の描写でイクのはとても悲しい事だった。
もう数行読み進めば【開かれた女体の割れ目から、男を興奮させる淫靡な部位が現れた。男が想像した通り、その部分は既に淫らな密が溢れ、牝のフェロモンを辺りに発散させ始めた。『はあん、早くう、早くう、このエッチなお○んこに、それをブチ込んでえ』】の部分に達していたのだが、もう取り返しのつかない事だった。
繰り返す。マスターベーションをする男にとって、『男根』の描写でイクのは、セ○ズリ5回分の興奮を消失させる程の破壊的があるのだ。
更に悲劇はそれだけではなかった。ティッシュの準備も整わないままの射精で、布団の中は大変な事になっていた。
マスゾウにとって、普段から気の使うこの家。更に妻からは、毎晩肉体のサービスを求められ続け、心休まる時がなかった。妻からの過分な欲求を求められる事に、辟易していたマスゾウが唯一癒されるのは、まさしく自分でコントロールの出来るマスターベーションだった。
休日のこの日は、サセエが朝から外出する事がわかっていたので、マスターベーションを楽しもうと決めていた。
そのため、昨晩から今朝に掛けてのサセエの求めをなんとか回避し、そのサセエと義母のサネと息子のタレオが出掛けてからも、義父のどうでもいい戯言に付き合った。
訳も無く家の中をウロウロする義弟と義妹。その落ち着きの無い2人が出掛けるのを待って、ようやく久しぶりにマスターベーションを堪能していたのだが、こと性に掛けては鼻の効くサセエは、予定を早く切り上げて帰ってきたのだった。