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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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C.-1

7月6日。
7月から夜勤の独り立ちだ。
独り立ちしてからは、なにもかも1人でやらなければならない。
陽向は気合を入れて早めに出勤し、患者さんの情報をとった。
近頃は2泊3日の短期入院の患者が増え、半数は名前の知らない患者ばかりだ。
今日はこんな治療をしてきたのか…と思いながら情報収集を進める。

日勤からの申し送りを済ませ、患者さんのところへ向かおうとした時、顔なじみの患者さん、岩本さんが話しかけてきた。
「あっ!風間さーん!」
「こんばんわー!お元気そうですね!良かったです!」
7月に入ってからは部屋の場所が変わってしまった関係で、その患者さんとはずっと関わりがなかった。
しかし、出勤の度に気になり足を運んでいたせいか、チームが変わった今でもこうして話せる仲である、唯一心許せる患者さんだ。
「風間さん、元気?ほら…看護師さんって新人って大変って言うじゃない?」
「元気元気!岩本さんもずいぶん良くなってきてるみたいで、良かったです。…でも、来週手術なんですよね?」
「そうなの…。手術の後はICUに行くって言われてるんだけど……こっち戻ってきたら、また風間さんが診てくれるの?」
「んー…それは分からないですけど…。また担当になれたら嬉しいです。手術、頑張って下さいね!ここに戻って来るの、待ってますから」
「うん!ありがとう!ちょっと怖いけど、また戻ってきたら、その時はよろしくね!」
陽向は岩本さんに手を振り、受け持ち患者へ挨拶しに歩き始めた。
どうか、岩本さんの手術が上手くいきますように……。
そう願いながら…。


岩本さんの手術が行われたのは、週明けだった。
15時間にも及ぶ、難しい症例だったらしい。
一行にICUから病棟に上がってこない岩本さんが気になり、翌週の日勤中、ICUのカルテを開いた。
術後からの記録を丁寧に辿る。
『脳梗塞』
その言葉を見て息が詰まる。
術後に、脳梗塞を起こしたのか。
だとしたら、きっと岩本さんは……。
陽向は震える手でカルテを閉じ、同じチームのペアだった高橋を見つけて口を開いた。
「あの……岩本さん…」
「え?あ、岩本さん?あー…オペ行ったね」
「脳梗塞になってるみたいです…」
高橋の顔が強張る。
「え、うそ?!」
高橋はパソコンを操作し、岩本さんのカルテを開いた。
同じく、丁寧に読み進める。
「あー……まじか…」
高橋は曇った顔を陽向に向けた。
陽向は何も言葉を発せずにいた。
「きっと…」
「…はい」
「この人が来るのはうちのチームだから…」
「……」
「風間さんに担当してもらってもいいかな?」
「え……?」
「知らないと思うけど岩本さん、風間さんのことすごく信頼してたんだよ。だから…いつになるか分からないけど、戻って来た時は風間さんを担当にしてもいいかな?」
陽向は高橋の言葉に「はい」としか返事をすることができなかった。


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