投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

プラネタリウムの最初へ プラネタリウム 19 プラネタリウム 21 プラネタリウムの最後へ

C.-3

「ねー、風間サン。いつんなったら報告出来るんですか」
数日後の昼時、瀬戸からプレッシャーをかけられる。
岩本さんにほとんど時間を費やした午前中は、他の仕事が驚くほど回らなかった。
何をしていたのか、と問われれば2、3個しか思いつかないのに気付いたら12時近くなっていた。
「あっ、すみません。あとモニター見たら…」
「早くしろ」
「はい!」
必死に受け持ち患者のモニターの履歴を辿る。
あぁ、もう!
なんでこんな日に限って不整脈が出る患者ばっかり自分の受け持ちなんだ!
イライラしながら全員のモニターを見終えて瀬戸の元へと行く。
「すみません…お願いします」
「あい。早くしろな」
と、言いつつなんやかんやと突っ込まれ、びっくりするほど時間が過ぎる。
陽向はどれにも答えられずに黙りこくる時間もしばしばあった。
「なぁ、お前。患者看る気あんの?」
「……」
「循環器病棟の看護師なんだろ?」
「…はい」
「こんなんじゃ受け持ってもらっちゃ困んだけど」
「すみません…」
ステーション内の空気が死ぬほど重い…そう気付いたのは数秒経ってからだった。
ペアである進藤がチラ見しているのが視界のわずか先に映る。
陽向は涙を堪えるのに必死だった。
こんなんで泣いてたまるか…。
素直に自分の足りなさを受け入れるしかないのだ………。

休憩にやっと入れた時、休憩室には誰もいなかった。
陽向はここぞとばかりに泣いた。
悔しい?辛い?悲しい?
なんの感情なんだか自分にも分からない。
ただただ泣きたかった。
感情の赴くままに。
「風間」
気付いたら誰かに声をかけられていた。
頭を掴まれる。
陽向はテーブルに突っ伏したまま、何も答えなかった。
「あたしだって、最初はそーだったんだ」
その声は言った。
「風間がやれる事はまだ少ないかもしれないけど、力になるから。……泣いてる時間もったいないよ。午前中はなんもしてあげらんなくてごめんね。でもね、もっともっと風間に教えてあげたい事があるから…。辛いかもしんないけど、戻っておいで」
ドアが開いて閉まる。
あの声は紛れもなく、進藤の声だ…。
しばらくすると、自分が何故涙を流そうとしているのか、理由が分からなくなってきた。

やるしかない。
やるしか、ないんだ……。


プラネタリウムの最初へ プラネタリウム 19 プラネタリウム 21 プラネタリウムの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前