投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

レイジーマン
【その他 恋愛小説】

レイジーマンの最初へ レイジーマン 7 レイジーマン 9 レイジーマンの最後へ

レイジーマン-8

なぜなら、
<信じていいのか?>
という言葉には、そうであってほしい、というニュアンスが含まれているように思えたからだ。

つまり、
あたしの言葉が真実であることを
彼は願っているのじゃなかろうか。
あたしはごくり、と生唾を飲み、渇いた唇を舐める。

覚悟を決めた。

「…信じてください。あたしは…、先生のことが本当に好きなんです」
言い終わらないうちにあたしの体は強引に引き寄せられた。
いつの間にかあたしは先生の腕の中にいて、先生の胸に顔を押し付ける恰好になっていた。
「ぅわッ!先生、なに―…!」
思わず声を上げる。
「…酔い冷めちゃったじゃねぇか。お前がいきなりあんなん言うから」
「…っ」
あたしは返事をするどころじゃなかった。

やばい、やばい、やばい。
何この状況。先生の心音が聞こえる。
顔が先生の胸板にくっついてる!

自分の顔がかぁっと熱くなるのが分かった。

「先生…何で…こんな」
消え入るように呟く。
「あ?」

「…なんで抱きしめたり…するの?」
先生はしばらく黙ったままあたしの肩に顔を乗せていたが、いきなり顔を持ち上げた。
腕の中のあたしを見て、にやっと笑う。
「?…なんですか」
「お前、耳まで真っ赤。かわいー」
「…!」
言葉を失って、あたしはただ意地悪そうな先生の顔を見つめた。
更にあたしの顔が赤く染まったのは言うまでもない。

先ほどの質問をスルーされたので、改めて訊いた。

「…先生は…あたしをどう思ってるんですか」
もう分かり切っているようなものだが、どうしても聞きたい。

「んー‥、匂坂がもっかいおれのこと好きって言ってくれたら、おれも教える」
「…ぇえー、あたしもう何回も言ってるじゃないですか」
「…。じゃーキスしてくれたらいいよ」
「えぇっ!あたしから?」
「そう」
先生は滅多に見せない爽やかな笑顔で言った。
「……」
あたしは今までキスというものすら未経験の純真な乙女だったので躊躇うのも無理ないのだが、この笑顔に負けた。

それに、先生の口から決め手の言葉を聞かないわけにはいかない。

あたしは先生の肩に手を置いて、ゆっくりと唇を重ねた。
微かにチュッという音がした。
ただ唇を触れ合わせるだけの行為だけど、長い間そうしていた。
そしてなぜかあたしたちは、目を開けたままだった。
なんとなく、あたしは口づけしている先生を見ていたかった。
先生も、同様に思ったのかも知れない。
目が合って気恥ずかしかったけど、それはとても心地よいものだった。


唇が離れると先生は、相変わらず赤いあたしの耳に口を寄せて、小さく呟いた。


「…おれも、お前がやばいくらい好き…亜澄」

と。


レイジーマンの最初へ レイジーマン 7 レイジーマン 9 レイジーマンの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前