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吐息の会話
【その他 官能小説】

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吐息の会話-5

寝返りを打った武藤が顔をこちらに向けた。
(起きたのか?)
様子を窺った。彼がいま目覚めたらどうしようもない。ぼくは電気を指差した。
『消したほうが……』
『大丈夫……』
麗華の瞳は爛々と輝き、唾液に濡れた口の周りを舌舐めずりした。

 麗華はぼくの腕を取って起こすと、今度はゆっくりした動作で自分が仰向けになって脚を開き、両腕を上に伸ばした。その形はすべてを任せるというぼくへの呼びかけだと思った。
『さあ、好きにしていいのよ』

 あらわになった脇の襞状の肌質は何とも悩ましい。脇毛の青白い剃り跡がとても淫靡に見え、そこも一種の秘部のように思えてきた。
 胸のふくらみが平たく広がってその裾野のすべてがわかる。改めて豊満な乳房であった。
 重なったぼくは脇の下に吸いついた。
『う!』
女体の強張りが伝わり、熱い息が吹きかかる。
『麗華!』
彼女はぼくの裡で(武藤のお母さん)ではなかった。
『麗華』


 脇のかすかな塩味。舌を這わせ、ふくらみを伝って乳首を含む。
『あうう……』
忙しない吐息である。
『感じるわ』
『麗華……やわらかい……』
左右の乳房を交互に舐め、顔を押しつけた。

 完全に勃起していた。
向き合った麗華の唇から舌が出て蛇のように出し入れした。
『キス……』
『キス……』
重ねると熱い舌が差し込まれる。舌を絡ませることを知らないぼくは口中を這いまわる麗華の舌を受け続けた。

『ああ、美味しいわ』
彼女の生臭い口臭は陶酔を誘い、セックスの実感としてぼくを刺激した。
 いつかぼくの体は麗華の体を割っていて、怒張した先端は秘毛の中にあった。
キスを続けながら、麗華は腰を煽り、脚を絡めて器用に秘口に導いた。先端がくぐると股間を押し出して挿入した。

『ああ……奥までおいで』
麗華は自ら尻を上げて股間を突き上げてくる。
『入ってる』
自分のペニスが麗華の中で脈動しているのがわかる。武藤の顔をちらっと見たが、もう気にならなかった。だがやはり言葉は交わせない。いつ目覚めないとも限らない。そうなると自然と激しい動きも抑制する。

 ぎこちない動きで腰を動かすと麗華もゆりかごみたいに合わせてくる。昂奮している呼吸を極力潜め、ゆっくり動いていく。そのもどかしさが快感の膨張をより肥大化する。たしかにそうだった。

『気持ちいい……叫びたい』
『だめよ。がまんして』
『感じちゃう』
『あたしもよ。声は出しちゃだめ』
『おちんちんが泣きそうだ』
『あたしも泣きそうよ』

 武藤の声がして緊張が走った。麗華も身を固くしたのがわかった。結合部が一瞬引き締まったのである。
 動きを止めて武藤を窺った。寝言だとわかってぼくらは大きく息を吐いて互いを引き寄せ合った。

 ぼくは麗華に抱きしめられ、ぼくもしがみついていた。
 耳に彼女の息がかかる。ぼくも吹きかける。髪の香りを吸い込み、ぼくは寸前の射精に身を強張らせて声を呑み込んでいた。

 それからも寝ている武藤の横で、ぼくらは何度もセックスをした。彼の気配を窺いはしたものの、寝息を立てている顔のすぐそばで、全裸で緊迫の接触をひそやかに、かつ、大胆に行なった。弾む息を殺し、出来る限り動きの音を消す。その結果得たものは激しさからは感じ得ない細やかな性感であった。性愛の本質も知らないぼくが理屈を超えて、快感の奥深さだけは体が覚えたといっていい。
 
 麗華の突然の行動に翻弄されたこともある。
ある時、トイレから出ると麗華が立っていてそのまま押し込まれた。
『入りなさい』
素早くズボンを下げられ、便器に座らされたぼくの股間にスカートをたくしあげた大きな尻が後ろ向きに重なった。そして予期せぬことに萎縮していたペニスが肉圧に擦られて勃ち上がるや、麗華は尻を浮かせながら手を添え、難なく納めると前屈みになって踏ん張り、大きく胸を反らせて締め上げた。竿がしなるほどの力であった。
 それだけであった。立ち上がった麗華の股から滴が垂れた。狭い空間に二人の吐息が充満して熱い囁きが聴こえるようだった。

 息遣いで相手の昂奮は伝わってくる。吐息を交わせば無言の囁きとなって心の扉を叩く。さらに体を重ねて瞳の奥に愛欲の炎を見れば黙っていても辿る道はひらけてくる。

 むろん、少年のぼくにそんな複雑な考えはない。齢を経てからのち、様々な官能の綾があるとわかってきたのである。ただ、誰とセックスをしていても、這うように快感が迫ってくる麗華との交わりはぼくの中に沁みついていて恍惚の脳裏に常に彷徨っている。有里亜を抱いている時も、彼女を愛しながら麗華を感じているのである。それは不幸なことなのか?ぼくにはわからない。


 三年になって登校すると武藤が転校したことを知った。担任の話では家の事情で実母の郷里に行ったという。医院はそのまま開いていて父親の姿も見かけたから武藤だけが移ったようだ。その後、大人の話から麗華が家を出たことを聞いた。
 
 ぼくはときおり思うことがある。
(武藤はほんとうに眠っていたのだろうか……)
寝息さえ聴こえるすぐ横で繰り返された性行為。気付かなかったのだろうか?
(もしかしたら……)
二人は会話をしていたのではないか?

『ああ……感じちゃう……』
『がまんして。明日は気持ちよくしてあげる』
『じっとしてられない』
『だめよ。寝たふりするのよ、直樹ちゃん』


 


 


 


 

 
 


 


  


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