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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 4.-11

「……」
「昨日から何も食べてへんって言うからご飯食べさせたってなぁ。色々話聞いてあげたらな、遠距離恋愛で大阪で彼氏のこと待ってたのに、浮気されたんやって。問い詰めよーと思って、わざわざ東京来たのに冷たぁ追い返されたらしいんよ? 彼氏の部屋に入れてもらおーにも、浮気相手の女のせいで入れてくれへんかったって」
「……そんなの、ウソ……」
 智恵はクッションの上にあぐらをかいて、消え入りそうな声で言う友梨乃を見上げた。
「どこ行ってええかもわからんから、もっかい彼氏の部屋の前に戻ってきて、話聞いてもらおーと思って彼氏が一人になるん待ってたらしいんやけど、ずーっと相手の女が部屋におったんやって。結局、一晩中、道で待ってたんやで? さっむいのに」
 智恵はずっと半笑いで話し続けていた。「朝んなってやっと出てきたと思たら、やっぱり隣に浮気女がおんねん。しかも、手繋ぎながら地下鉄に乗ってくし。彼氏が途中で降りたらしいんやけど、……この子、その女の方に追いてったらしいんよ? 彼氏と別れてもらおーと思って、女が仕事終わるん待ってたんやって。でも寝てへんし食べてへんしで、ヘロヘロ。ウチが声かけたときも、こらあかん、って思たもん」
 話し終えると智恵は開けていた缶ビールを飲んだ。智恵の説明の間、美夕はずっと友梨乃を見続けていた。その恨みの視線から見れば、友梨乃の存在は智恵が言ったとおりに映っていたのかもしれない。昨日陽太郎の温もりの中で幸せに眠ったすぐ近くで、美夕は夜通し寒さの中で待っていたのだ。そしてやっと待ち人が出てきたと思ったら、他の女と楽しそうに手を繋いでいる。美夕の視点での光景が頭に流れ込んできて、内側から叩かれているかと思うほど鼓動が高まり、息がうまくできなくなってきた。
「店、修羅場にされてもかなわんしなぁ。お風呂入って、ちょっと寝たら落ち着いて話もできるやろーと思ってね。……座ったら? ユリ」
 智恵はそばに転がっていたクッションをぽんと友梨乃の足元に投げた。「一応、美夕ちゃんもいきなり飛び掛かったりはせん、って言うてくれてるよ? ……なんかあんた今日朝からゴキゲンさんやったけど、よー刺されんと無事帰ってきたなぁ」
 智恵の笑みが混じる声を聞きながら、友梨乃は薄らに眩暈がして、胸に手を当て陽太郎に借りたトップスをぎゅっと掴みながら、膝の力を失ってクッションの上にへたり込んだ。
「ほんで?」
 友梨乃が座ったのを見届けると、智恵は美夕のほうを向いて問うた。「美夕ちゃんはどーしてほしいん?」
「先輩と別れて欲しい」
 美夕が即答した。友梨乃は視界を曇らせ過呼吸寸前になりながらも、ここで引いたら大事な陽太郎を失ってしまうから、
「……陽太郎くんは、もし私と別れたって……。み、美夕ちゃ……、……あ、あなたの元には戻んないよ」
 と辛うじて言った。
「なに? その言い方」
 凄まれたが、友梨乃は勇気を出して顔を上げ、美夕に告げる。
「陽太郎くんは、……私のことを好きなんだから」
「はあ?」
 美夕が抱えていた脚を崩して、友梨乃の方へ突っかかって行こうとするのを、二人の間に四つん這いで進んで智恵が止めた。
「まーまー。……ユリも言うようんなったねぇ?」
 智恵は二人を交互に見て軽く頷きながら言った。
「そんなん、どーせこの女が、巨乳使こて先輩をたぶらかしたんです」
 美夕は智恵に対しては敬語を使っている。半日の間に智恵は美夕の心を掴み、信頼を得たのだろう。
「私、そんなことしてない」
 友梨乃は嘘を淀まずに平然と言った。智恵も友梨乃の欺瞞に気づいた筈だが、何も言わず、微笑みを湛えたまま二人の間に割って入り続けていた。
「……わたさない」
「え? なんて? ユリ。もっとハッキリ言わんと私にも、美夕ちゃんにも聞こえんよ?」
 明日への思いが、視界の白靄を晴らしていった。せっかくここまで来たのに。友梨乃は力を振り絞って智恵と美夕に強い眼差しを向け、
「陽太郎くんは誰にも渡さない!」
 強くハッキリと言った。気弱そうな女だと思っていたのに、友梨乃が憎悪の視線を向けてきたから美夕は怯んだ。お〜、とからかうような表情で智恵が囃す。
「……せやて。美夕ちゃん、どうする?」
「別に……、先輩が、私んトコに戻ってこんでもいいですよ」
 美夕は友梨乃に負けない憎悪の炎を宿らせて見返した。「けんど、この女が先輩とくっつくんは我慢できません。それだけは、ぜったいにイヤ」
「……やって? ユリ」
 智恵は今度は友梨乃の方へ意向を伺ってくる。
「やだよ。なんで陽太郎くんと、わ、別れなきゃいけないの?」
 息を何度も飲みながら、しかし己の欲求を隠さずに言った。「陽太郎くんは、私のこと、好きなんだから。……別れる必要なんか、ぜんぜんないっ」
「ふぅん……、ていうか、ユリもヨーちゃんのこと好きなん?」


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