鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 3.-10
「何ですか?」
「……え、っとね。……」
友梨乃は引き寄せている陽太郎の手首を掴んで腰から外した。この幸せな時間の終了を促してきたのかと思って、陽太郎に悲しい気持ちが射し込んだが、友梨乃は聞こえるかどうかの小さな声で続けた。「う、動かしたりしないでね」
友梨乃は俯いたまま固く瞼を閉じると、陽太郎の手を膝を開いて緩めた脚の間へと導いていった。太ももに触れると陽太郎の指がピクリと動く。
「お願い……、じ、っとしてて……」
プリーツキュロットの脇から中へ差し込むと、あまりの恥ずかしさに友梨乃は脚を閉じて陽太郎の手を挟み込んで体を小さくした。だが陽太郎の指先には友梨乃の秘丘の薄布が夥しい蜜に濡れ滲んでいるのが確かに感じられた。陽太郎に舌を吸われているうち、友梨乃は溢れてくる蜜を我慢することができなかった。恥ずかしいが、これは女の悦びの反応だ。それを陽太郎に伝えたかったのだ。
「ユリ……、さん」
「……す、すごいでしょ」
友梨乃はそのまま陽太郎の胸に顔を預けた。シリコンバストの柔らかみは、まるで本物の胸乳のように友梨乃の頬を優しく受け止め、香水の香りに包まれながら陽太郎の指がショーツに触れているだけで動かしてもいないのに下着の奥が蠕動して新たな蜜がこぼれ落ちてきそうだった。
陽太郎は温かく柔らかい、そしてヌメるその場所の感触に気が狂いそうだった。友梨乃の体が反応していることは望外の喜びだ。たとえそれが、自分の偽りの姿に欲情しているのだとしても。陽太郎は指先を動かして、脚の付け根のショーツの縁をなぞった。そこも溢れだした蜜でしっとりと肌をヌメらせていた。
「んっ……、動かしちゃ、だめ……」
「もっと、奥まで……」
「で、電気消して」
友梨乃は髪を揺すって小さく首を振った。
「無理です」陽太郎は俯く友梨乃の額にキスしながら、ショーツの縁から中へ指を忍び込ませていった。「ユリさんから離れたくない」
「やっ……」
指先が慎ましやかなヘアをなぞり、そこはもう蜜を含んで撓っているのを知られて友梨乃は羞恥に甘みを増した声を漏らした。優しく友梨乃をほぐすように奥へ入っていく。友梨乃は両手で陽太郎の手首を持っていたが、全く力が入っていなかった。
「はぁっ……、よ、陽太郎くんっ……、はずかしいよ……」
「めっちゃ可愛いです……」
陽太郎の指先が既に敏感にそそり立ったクリトリスを摩ると、友梨乃は腕の中でヒクつきながら、慌てて陽太郎のニットにしがみついてきた。「感じてくれてうれしいです……。ユリさん……」
今にも欲情のままにクリトリスを弄り回したい衝動と闘いながら、陽太郎は手首に力を込めてそれを抑えこんでいた。その忍耐による震えが友梨乃の性感の密集地である雛突へ振動となって伝わってくる。友梨乃は恥ずかしくて顔を上げることができないが、陽太郎に癒してもらっている悦びに奥から雫が滴るのを抑えることが出来なかった。
「よ、陽太郎くんっ……」
顔を押し付けたニットの中で言った。「私、……濡れてるよね?」
「はい……。……めっちゃ濡れてます……」
顔に陽太郎の強い鼓動が伝わってくる。陽太郎が指を滑らせると、小さく水撥ね音が下腹部から聞こえてきて、羞恥が友梨乃の脳髄を痺れさせる。羞しいのにそれを陽太郎に聞かれると何故か余計に下腹部が疼いていった。
「ねぇ……、陽太郎くんとして、ぬ、濡れてるよ……」
「うん。……ユリさん……、キスしたい」
陽太郎は腕の中で甘い悲鳴を漏らしながらしがみついてくる友梨乃が愛おしすぎて、俯く友梨乃の髪に頬ずりして呼び込んだ。友梨乃が涙と情欲に潤んだ瞳で見上げると、開いた唇の間からおずおずと舌を差し出してきたから、陽太郎は思わずその舌先を啄むようにキスをして、指先をクリトリスから入口に移すと、濡れて緩んでいる友梨乃の体の中へ指先だけを埋めた。
「はっ……、ふぁ……」
口を開いたままの友梨乃からうっとりとした声が漏れた。友梨乃が自分の愛撫に感じてくれている。その喜びを伝えたくて、陽太郎は友梨乃の麗しい唇を舌先でなぞり、端からこぼれ出ている涎を啜った。
「や……、はあっ……、ああっ……!」
友梨乃が陽太郎の腕の中で背を仰け反らせた。陽太郎がゆっくりと挿し入れていった指が全て温かく潤った柔肉に包み込まれる。奥まで入った指を動かさずにいても、友梨乃の内部は陽太郎を抱きしめ強く吸い付いてきた。
「中……、すごい」
「やだっ……! 言っちゃだめっ……」
生身の人間の体の一部を体内に迎え入れたのは初めてだった。友梨乃は指を何度も締め付け、かぶりを振りながら陽太郎を見上げた。目の前にいる女が自分を抱きしめてくれている。
「キス、してっ……。お願いっ……」
マスカラで麗しく飾られた瞳を見つめて訴えた。愛らしくも妖美をまとったその美貌に、陽太郎が吸い寄せられるように深く唇を吸うと、思わず友梨乃は座ったままより深く指が中へ入るように腰を前に押し出した。