幸代の決意-1
翌日は海斗と幸代は同行で外回りだ。一昨日の夜以来まともに言葉を交わしていない2人。事情を説明しなきゃと思う海斗と説明して欲しいと思っている幸代だが車の中でなかなか会話のきっかけが掴めず無言の時間が流れていた。
沈黙を破ったのは海斗だった。
「一昨日はごめんな?」
「あ、い、いえ…」
何処よそよそしい雰囲気になる。どちらかと言うとあの女性は海斗とどういう関係なのかが物凄く気になる幸代のほうがソワソワしてしまう。
「ちょっと停めて話そうか。じっくり話したいから。」
「あ、はい。」
今日は割と時間が自由だ。海斗は公園の駐車場に車を停めた。身を構える幸代に海斗はゆっくりと話す。
「あの女性は進藤瀬奈って言うんだ。でも俺自身、彼女がどんな人間なのかを知ったのは一昨日、おまえが帰った後なんだ。それまで瀬奈という名前しか知らなかったんだ。」
「そ、そうなんですか…。」
「ああ。信じられないかも知れないが、これから言う事は本当の事なんだ。ちゃんと聞いてくれるか?」
「はい。」
「うん。俺と瀬奈との出会いは、ほら、台風の中釣りに行ってみんなに心配かけた時あっただろ?」
「あ、はい。」
一応心配をかけたという意識はあったんだな、そう思った幸代。
「あの時な、物凄く重い物が掛かったんだ。いよいよ大物かと喜んだが、でもな全然動かないし魚じゃない事はすぐに分かった。でも殆どヤケになってた俺は超大物だと自分に言い聞かせて夢中でリールを巻いたんだ。寄せて見るとやはり魚じゃなかった。それに掛かっていたのが、瀬奈なんだ。」
「えっ!?」
普通に聞いていたら嘘だと思った事だろう。しかし信じてくれと海斗に言われた幸代は素直に受け止める。
「どうして海の中に瀬奈がいたかと言うと、…」
海斗は瀬奈がどういう環境で暮らし、そして飛び降り自殺をするまでを話す。そしてそれから家で一緒に暮らす事になった事情を話した。