幸代の決意-4
翌日、幸代は香水をつけて来なかった。もともと海斗に事実無根の一言で香水をつけるようになったのだ。海斗が困るならつける必要はないからだ。それに気付いた海斗は幸代にとって必要のない迷惑な言葉でフォローした。
「ん?幸代!香水つけなくてもいい匂いするな!おまえ、いい匂いするんだな!フェロモンか!?おまえのフェロモン、超いい匂いするじゃん!!」
「!?」
本人は幸代をフォローしているつもりだが、幸代にとっては有り難迷惑のいらぬ言葉だった。
「えっ?そうなの?」
「どれどれ…」
周りの社員が匂いを嗅ぎにくる。
「ち、ちょっと…!や、ヤダッ!止めて下さい!!」
男女入り乱れて嗅ぎにこられて困惑し恥ずかしくなる。
「う〜ん、言われて見ればいい匂いするような…」
「ふ、普通です!!」
「フェロモンか…。何かムラムラしてきたような気もする…」
「!?せ、セクハラですよ!?」
「じゃあ私が良く検証します♪」
知香が抱きつくように首筋の匂いを嗅ぐ。
「ち、知香ちゃん止めて…」
首筋に知香の息がかかり微妙に感じてしまう。
「これはフェロモンですね!幸代をちゃんのフェロモン、超いい匂いします♪」
「ち、知香ちゃん!!」
完全に幸代をからかっている知香。ちょっと感じてしまい顔がほんのりピンク色に染まった。
「幸代、何か色っぽいぞ!フェロモン出てる〜!」
ケラケラ笑いながら囃し立てる海斗。
「ちょっと〜!海斗さんが変な事言うからでしょ〜!!」
朝から大変な目にあった。そんな光景を見た安田は思う。
(何かちょっと変わったな、田崎も。)
幸代の雰囲気が変わった事が少し喜ばしい事と感じる。ただし海斗のように馬鹿にならないでくれることだけは切に願うのであった。