幸代の決意-3
幸代は積極的な姿を見せる。
「海斗さんは瀬奈さんを救ってあげるんですよね。」
「ああ、そのつもりだ。」
「男1人で救えるんですか?女の子の気持ちは女の子が1番良く分かるんじゃないですか?海斗さんは女心が全く分からないじゃないですか?」
「ま、まぁ…そうかな…?」
「だから私が協力して瀬奈さんを救うお手伝いをしますよ。話を聞いていて私も瀬奈さんを救いたい…、そう思いました。」
「いやしかし、またいつ瀬奈がああ言う状態になるか分からないし…」
幸代に危害が及ぶ事だけは避けたい海斗。簡単には頼めなかった。
「瀬奈さんが私を私だと認識できれば問題ないと思います。まずは私から月島優衣の幻影を振り払えれば、私を田崎幸代として見てくれるはずです。女の子の悩みは女の子が1番分かるんですから。私、絶対に瀬奈さんと仲良くなってみせます。だから協力させて下さい。」
海斗は心配そうな表情を浮かべて言った。
「物凄く助かるけど、いいのか?」
幸代は力強く言った。
「はい。」
と。そんな幸代を見て海斗は協力してもらう事を決めた。そこで幸代は普段滅多に見せない姿を目にする事になる。
「正直な、俺もどうしたらいいのか分からなねーんだよ。瀬奈のああ言う姿を元に戻すのは旦那が浮気を止めて瀬奈だけを愛する以外にないと思うんだ。当事者でない俺が一体どうすればいいのかまるで分からない。今まで釣りしかしてこなかった罰だな。釣り以外に何もできねー。」
珍しく弱気な姿を見せる海斗。いつも楽観的に、そしてどこから来るのかさっぱり分からない自信を持ち、自信満々な海斗の姿しか見た事がない幸代にとっては物凄く意外であったし、初めて何とか海斗の力になりたいと思った瞬間であった。
「私も解決策は分かりません。でも1人でダメなら2人で立ち向かえばきっと何とかなりますよ。大丈夫ですよ。」
そう言った幸代に海斗は言った。
「楽観的だな!」
嬉しさを押し殺しニコッと笑った。
「言われたくないし♪楽観的な上司を持つ部下の気持ち、分かりましたか?」
「ハハハ!気をつけるよ、なるべくな!」
海斗の表情もだいぶ明るくなり安心した。
(釣りばかりしてそれ以外に何も出来ないって言ったけど、知らず知らずのうちに私に色んな事を教えてくれてるんですよ、海斗さんは。)
そう言いたかったがわざと言わないでおいた幸代だった。