幸代の決意-2
一通り今までの事を話した海斗。幸代は頭の中で話を整理するかのように暫く黙り込んだ。その姿に幸代に話しかけずらくなった海斗はぼんやりと前の景色を見つめていた。
「信じるよ?」
沈黙を破り幸代が口を開く。
「信じてくれるのか?」
「はい。」
コクリと頷き海斗を見た。
「だから瀬奈のあの時の怒りはおまえに向いたものではなく、月島優衣という女性の幻覚になんだ。それも分かってくれるのか?」
「はい。」
瀬奈は自分に向けはっきりと月島優衣という名前を叫んだ。その事から海斗の説明に対して納得がいった。瀬奈がどうしてあんな状態になったのか理由がわかった幸代。怒りの矛先が自分ではなかったとは言え原因を作ったのは事実だと感じた。
「海斗さん、私、明日から香水止めます。香水つけてる限り瀬奈さんを刺激するし、海斗さんに被害が及ぶから…。ごめんなさい。」
「おまえが謝る事はないんだよ。まぁおまえに香水つけさせる原因は俺の発言のせいだからな。」
「だからもう体臭がきついとは言わないで下さいね?」
「ああ。」
2人の表情が少し明るくなった。
ともあれ海斗からちゃんと説明を受け瀬奈と付き合っている訳ではない事が分かっただけでも胸の支えが取れた気分だった。しかしセックスをしている事実も同時に知る事になり多少なりともショックを受ける。別に海斗と付き合っている訳ではないから海斗が誰とセックスをしようがそれを責める資格はない。そう納得せざるを得なかった。それよりもジェラシーを感じたのは呼び捨てで瀬奈と言っていた事だった。付き合っていないとは言え関係の親密ぶりに嫉妬する。
その時、知香に言われた事を思い出した幸代は海斗にこう言った。
「私に何か出来る事はありませんか?」
と。海斗の為に何かしたい…。その気持ちを強く持つようになった。
「おまえを巻き込むのは…」
気持ちは有難かったが気が引けた海斗であった。