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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈亡者達の誘う地〜最終章〉-5

『か…夏帆!?』


フワフワと浮いている人影は、数年前にサロトへの貢物とされ、寵愛の果てに棄てられた夏帆であった……痩せこけた顔は土気色で、長い髪は般若のように乱れている……。


「苦…し……」

「美…津紀ぃ……うぅぅ……」


現れたのは夏帆だけでは無い。
あおいや芽衣、文乃や麻里子、そして幼くして人生を絶たれた少女達までも、鉄壁を通り抜けて部屋中を飛び回った。


『うわあぁッ!!ゆ、許してくれぇッ!!許して……ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!』


浮遊する亡者達は専務に襲い掛かり、髪を毟り目玉を抉って奇声をあげた……血みどろになっていく専務は、その悲鳴を貨物船の中に響かせながら、海中に没していった……。







『……終わったな……』


ワイヤーにブラ下がりながら、八代は沈みゆく貨物船を見ていた。
船尾から沈降し、牡蠣などが付着した船底を海面から突き上げ……そして、全てを飲み込んだまま海面から消えようとしていた……。


貨物船を眼下に、昇降ワイヤーは巻き取られていく。
後はヘリに乗り込み、一刻も早くここから去るだけだ。

降りる時はあまり感じなかったが、ローターが生み出す風圧はやはり強力で、必死に握っていなければ振り落とされそうになる。
どうにかヘリまで辿り着いた八代は、スライドドアのドアノブを掴み機内に乗り込もうとした……振り返るパートナーの伸ばした腕を、慰労の意味だと思って笑顔を見せた八代だったが、急転直下の展開に、笑みは凍てついて軋んだ……。


『……そういう事かよ…ッ』


伸ばした腕の先には、黒く光る拳銃があった……一瞬の閃光の後に八代の眉間には穴が開き、その身体は沈みゆく貨物船に衝突した……。


『……御苦労様だな……』


澄み渡る青い空と、群青の海。
貨物船の最後の吐息が海面に白い泡を立てていたが、やがて力尽きて静まり返り、もはや、其処には何も無くなった。

あの黒鉄の魔物が浮上する事は無い。

深い海の底で、亡者達の晴らせぬ無念の叫び声を、その腹の中に響かせるのみだ。



《完》


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