(その3)-3
掌に感じる彼の肌は、まるで柔らかい薄靄の中に散りばめられた宝石の光のような微熱を含ん
でいるようだった。その微熱は私の中の隅々まで滲み入り、閉じた細胞を開かせ、私の肌を
染め変える。
私の指が薄い白色のブリーフに包まれたカオルくんのものにそっと触れる。ふわりと盛り上が
った彼のものに切ない柔らかさをふと感じたとき、私の中の潤みが雪どけの水のようにさらさ
らと音を奏で始める。
私はそのベールのような生地の上から、彼のものに吸い寄せられるように頬を寄せた。石鹸の
匂いのする薄いブリーフに包まれたペニスが息吹き始め、幹芯から伝わってくる鼓動はどこか
遠い海の彼方から潮騒の音を運んでくるようだった。
私はカオルくんの薄い布地のブリーフをゆっくりと脱がせる。飴色の灯りの中で、薄紅色の無
垢のペニスが、微かな風を孕んだような淡い陰毛に覆われ、ふるふると少しずつ堅さを含み始
めていた。
なぜか私は嬉しかった。カオルくんのものを目の前にして、私はこれまで感じたことのない
ペニスの甘酸っぱい匂いを胸いっぱい吸い込んだ。カオルくんのペニスにはまるで澄み切った
星屑の煌めきを含んだような輝きが散りばめられていた。
彼の白い腿の付け根に私は深く顔を埋め、唇を擦りつけるようにして彼のペニスを優しくまさ
ぐる。彼の影法師のようにあどけないペニスの幹をゆっくりと唇でなぞりながら、心地のよい
体温を含んだ垂れ袋を唇に摘み上げる。唇のあいだを脆さを含んだ肉珠がゆるゆると戯れる。
肉珠が私の唇で啄まれ、くすぐられるほどに彼のペニスが樹木に息吹き始めた瑞々しい芽のよ
うに可憐に漲ってくる。
私の湿った吐息がカオルくんのペニスを包み、唇がその先端をゆるやかにとらえる。どこまで
も花の蜜のような匂いのする甘い香りだった。薄桃色に赤らんだ亀頭を私の唇がゆるやかに
受けとめたとき、胸がふさがれるような甘美なものが春風のように私の中をとおり抜けていく。
すっぽりと口に含んだ彼のペニスの先端が頬の内側の粘膜をなぞり、咽喉の奥で肉幹を微かに
よじる。私は唇でぎゅっと彼の幹を締めつけ、舌を愛おしく亀頭に絡めた。幹の中に流れるも
のが脈々と私の舌に切ないほど伝わってくる。
彼のペニスに触れる私の舌先に、あの街に広がっていた花畑の淡い甘さを含んだ蜂蜜のような
唾液が絡む。そのとき、自分の中にどこからか懐かしい匂いを含んだ記憶がよぎり、私は確か
に高校生の頃の自分に戻っていたような気がした。
叔父に犯され、あの街をあとにした頃…。そして私は自分を突き放すようにAVのカメラの前
で意味のない男たちを受け入れた。そしてクノキとの無為の時間。傷ついた私は自分を追いや
るようにカメラの前で鞭打たれ、恥辱の責めに晒され、もがき、喘いだ。そしてためらいなが
ら自分の手首にナイフをあてたあのとき…。いつも自分を突き放そうとする私を、今、目の見
えないカオルくんのからだの中にある懐かしいあの頃の光が、泣きたいほど切なく私を包み込
んでくるような気がした。