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ひこうき雲
【SM 官能小説】

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(その3)-4

下着を脱いだ私は、カオルの腰に跨るようにして彼のものをゆっくりと自分の中に含む。視点
の定まらないカオルくんの澄みきった黒い瞳がスタンドライトの蜜色の灯りの中でかすかに
揺れ動き、彼の両手が私の腰を優しく引き寄せる。ペニスの先端に私の肉の割れ目がしとやか
に絡んでいく。

私の肉のあわいに甘い切なさと優しさがすっと湧き上がる。堅くも柔らかくもない肉感を含ん
だペニスが、私をくすぐりながらカオルくんの追憶へと誘う。自然にくねり始めた私の子宮の
奥に乳色に霞んだあの街の記憶がしだいにくっきりと浮かびあがり、色濃く匂ってくるような
気がした。

私はゆっくりと彼のもの自分の中へ導きながら、海綿のように揺らぐ襞で幹を愛おしく包み込
む。彼のペニスの先端が、ゆるやかに粘膜に戯れる心地よさが私の背筋を走り抜ける。それに
反応するようにカオルくんのものが、ピクピクと撥ねるように私の中で頭をもたげ、さらに堅
さを増していく。

私は、カオルくんのものを夢中で肉襞で噛みしめ、止めどもなく流れ出る涙のように蜜液を絡
ませる。やがて彼が視線の定まらない瞳を潤ませ、私を強く抱きしめたとき、私は忘れていた
懐かしい優しさを含んだ潤みをからだの中に感じた。からだと心の奥底から光輝いてくる眩し
いものがいつのまに蕩け、私の薄い肉の襞に瑞々しい遠い感傷を描いていった。



秋の黄昏の光がカフェの窓から優しく差し込んでいる。
週末の夕方、久しぶりに行きつけのカフェを訪れたが、舞子さんはいなかった。窓から不意に
吹いてきた渇いた風が私の頬を優しく撫でていく。色合いを深める秋空の果てに、白い雲が
オレンジの暮色を湛えていた。


私は、自分の中に止まった時間を抱きしめるように深いため息をついた。私の心の中にずっと
つかえていたものが、優しげに霞み始める。

セックスなんて嫌いだと思っていたから、いろいろな男に抱かれた。AVで演技もした。そし
てどんな男にも性の高みに達することはなかった。でも、クノキと別れ、あのAVの中で鞭打
たれ、身を切るような凌辱に悶え抜く自分を感じたとき、私はもっともっと責められたいと
思った。クノキに私のほんとうの姿を見て欲しかったから。

心の切なさを性に委ねるように自分を責め続けることで、いつも私を襲ってくる寂しさから
初めて逃れようともがいていたのだ。私の胸の内を烈しく焦がし、心の襞に空しい煩悶の傷を
封じ込めることで私は、クノキとの関係を自分の中から遠くへ追いやろうとしていたような
気がする。

そんな私の心を、いつも遠くで想ってくれていた人がいたのだ。吹田カオルくん…。私は抱き
寄せた記憶の中で、あの街の青い夏空に刻まれたひこうき雲の懐かしい光に優しく抱擁された
ような気がする。


そのときカフェの窓の外に見える白い雲と黄昏色の空のあいだに、音もなく、すっと細い筋と
なったひこうき雲が天に舞い上がるように一瞬にして刻まれた。ふと私の中をゆるやかに充た
すものがあった。光を感じ、風に心をゆだね、閉ざされた心をせいいっぱい開いたとき、私は、
私自身に戻ったような気がした。




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