異変-1
いきなり訪れて迷惑がられるか心配しながら車を走らせる幸代。あまり運転は得意ではない。ナビが示す右折も目の前の道なのかすぐ先の道なのか迷ってしまう程である。運転自体慎重すぎる程慎重な為、今まで事故した事はない。ま、遅すぎてクラクションを鳴らされる事はしばしばあるが…。常に緊張しながらようやく海斗の家まで近付いてきた。
辺りは田んぼや畑が多く見られのどかな雰囲気を感じさせる。車通りもそれほど多くなく住宅も多い。街灯も多く寂しい感じはしない。むしろ運転しやすいぐらいだ。
田園風景を抜けちょっとした住宅地に入る。そしてその住宅地の中でも一際目立つ豪邸が目に入った。
「わっ!凄い家!こんな場所にこんな豪邸があるんだね…。」
明らかに浮いていた。遠くから見てもかなり目立つ。その家の前を通りかかるとナビが案内を終える。
「目的地に到着しました。案内を終了します。」
幸代はえっと思った。
「ち、ちょっと勝手に終わらないでよ!!どこよ?!」
思わずハザードランプを点灯し車を停めた。そして画面を確認する。
「えっと…今停まってる左?」
幸代は左にある家を確認する。するとまさにその豪邸が聳え立っていた。
「えっ!?こ、これ!?嘘でしょ!?」
信じられなかった。完全にナビを信用していない。頭の中が混乱する。
「だって海斗さん、そんなお金持ちに見えないし…。」
普段の海斗からは特に裕福さを想像させる要素は一つもない。普段から同行していてもバンバン金を使うタイプでもなければ自販機で少しでも安い所を探してジュースを買うほどだ。そんな海斗がこんな豪邸に住んでいるなどとはとてもじゃないが想像できなかった。
「表札見てこようかな…。」
幸代は車の前後を2度ずつ確認してから車を降りて表札を見た。
「葛城海斗…!ま、マジ…??これ、海斗さんの家!?」
思わず2、3歩後退りしてしまった。表札に海斗の名前しか書いていない。しかも貼り紙が貼ってあり、釣り道具以外のセールスお断り、と頭の悪そうな文字が書いてあった。
「か、海斗さんの家よね、やっぱ…」
信じられないが事実だ。幸代はフラフラとしながら車に戻った。