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THE 変人
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異変-4

 驚きというより恐怖に怯えるような表情で海斗の肩越しに後方を見つめている幸代を見て海斗は言った。
 「ん?どうかしたか??」
しかし海斗の声が届いていないようだ。海斗の声に無反応で後方を見つめている。
 「あっ…あっ…」
口を開け言葉にならない様子でそう口にしていた。そんな幸代の顔を見ている時、背後から何かゾクッとするような恐ろしい気配を感じる。振り向きたくない、そう思わせる気配に海斗は恐る恐る、ゆっくりと振り向こうとした。その瞬間…。
 「やっぱりまだ別れてなかったんだ…」
低く冷たい声が聞こえた。今まで聞いた事のないような瀬奈の声だった。背後に瀬奈がいる事を感じた海斗。ここはしっかりお互いを紹介すべきだと思い、背後に振り向きながら言った。
 「あ、彼女は…会社で…どうりょう…の…」
そう言って視線が瀬奈を捕らえると海斗の目はまるで瞳孔が開いたかのように恐れおののく。何故ならボーッと立っている瀬奈の右手には包丁が握られていたからだ。まるで何かに取り憑かれたかのように無表情で俯き加減の顔で鋭い目つきで幸代を睨んでいる。
 「せ、瀬奈…?」
ただならぬ雰囲気に海斗は鳥肌が立つ。完全に殺意を持ってこちらを見ているのが分かる。瀬奈の豹変ぶりに海斗は体が固まってしまう。
 「あれ程約束したのに…。もう別れたって言ったのに…」
まるで冷たい風に吹かれたかのように瀬奈の言葉が2人を襲う。
 「な、何言ってるんだ…?」
幸代との関係は説明して理解しているはずだ。しかし別れるとか意味不明の言葉を口にする瀬奈に海斗は戸惑う。
 「堂々と家に乗り込んで来るなんて図々しいというかいい度胸してるわね、あなた…」
 「え…?い、いえ…、私は…」
体が震えてきた幸代。恐怖に立ち尽くしていた。一体これがどのような状況なのか考える余裕すらなかった。しかし自分はあの女性にあの包丁で刺される…、それだけは肌で感じた。
 「もう永遠にこの人に近づけないようにしてあげるわ…?」
そう言って幸代を睨みつけながらゆっくりと歩き出す。
 「あ…あ…」
恐れおののく幸代。海斗は思わず体を張り幸代を守ろうとする。
 「忌々しい匂い…。毎日有樹のシャツにこの香水の匂いをつけて私に喧嘩を売ってるのよね…?月島優衣…!」
包丁を握りしめた手を徐々に上げる。
 「お、おい…、有樹とか月島優衣とか何の事なんだ!?」
意味不明な言葉を口にする瀬奈を不気味に感じる海斗だった。


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