ラ-1
「片桐。ココ会社なんだけど」
キャーキャー言う女の子たちを困ったようにそれぞれの席に着かせて
入口から見物している他の部の人たちを部に帰らせ
笑いながらため息をついて
石島さんが腕を組んで豪に注意をした。
「あ・・・」
石島さんの言った言葉に我に返った豪は
ハッと私を少し離すと困ったように石島さんに笑いかけた。
「石島、久しぶり」
「久しぶり。こんなところで、そんな風に横手さんを抱きしめながら
言う言葉じゃないけどな」
豪は石島さんのその言葉に赤くなった。
「レストラン、順調なんだって?」
「まぁ、親父が残してくれた評判のおかげ」
「そんなことないだろ。お前の代になってさらに評判は上がってる」
「俺は野菜を卸してるだけさ」
「そう言えば、うちの会社と契約してくれるんだって?」
石島さんはニヤニヤと私を見ながら豪に確認した。
「ああ。契約はする。交換条件に響子は返してもらう」
「返すって、モノじゃあるまいし。それに横手さんの気持ちもあるし。なぁ?」
全部知ってるくせに。
私が会社を辞めて、豪の所に行くって石島さん知ってるくせに。