I'M A LOSER-6
想いの比重は、ずっと俺の方が大きくて、もし別れることがあるとすれば、絶対に俺がフラれるって思ってた。
だから、自分が別れようって言うなんて、じぶんでも信じられなかった。
「倫平……! どうしてそんなこと言うの? あたしを嫌いになっちゃったの!?」
堰を切ったように泣きわめく沙織の姿に、胸がズキンと痛む。
俺だって、ホントは別れたくないよ。
嫌いになった? んなわけねえ。
今だってこんなにも好きで好きで仕方ないのに。
でも、ハッキリ言って、情けない自分にウンザリしているのも事実だった。
歩仁内みたいに、好きだからと素直に沙織を求めることもできず。
修みたいに、自分の彼女を州作さんにしっかり牽制してつなぎ止めておくこともできず。
州作さんみたいに、沙織のピンチを救ってやることもできない。
こんな情けない負け犬に、沙織が愛想を尽かすのは時間の問題だ。
だったら、沙織に完全に嫌われる前に、逃げ出したい。
頭の中にはそれしかなかった。
だけど、沙織の大きな瞳から次々と涙が溢れてくるのを目の当たりにすると、迷いが生まれる。
この涙は俺を失いたくないと訴えている涙であって、それは俺を好きでいてくれるからであるのは明らかで。
沙織の心が州作さんに向いてしまうのでは、という不安に駆られて、逃げ出すのは間違いなのかという思いがよぎる。
沙織はいろんな男から人気があって、そのたびにヤキモキさせられてきたけど、沙織はいつも誠実だったじゃないか。
今ならまだ、引き返せる。
そう思った俺が、ゆっくり口を開いたその時だった。