I'M A LOSER-4
原因は、次の瞬間に思い知ることになる。
「でも、歩仁内くんのお兄さんが来てくれてよかったあ。さっきはホントに怖かったもん」
胸を撫で下ろす沙織の姿に、一瞬身体がピクッと固まった。
途端にいたたまれない気持ちが雪崩のように押し寄せてきた。
だよな、やっぱりそう思うよな。
彼女が目の前でナンパされて、助けようと勇気を振り絞った彼氏は、ナンパ男らに鼻であしらわれて。
一方州作さんはサラッと沙織を助けて、実はめちゃくちゃ強いなんてギャップを隠し持っていて。
州作さんはすげえカッコいいのに、俺はてんでいいとこなし。
噛み締めた奥歯にさらに力がこもる。
「さ、気を取り直して州作さんのお手伝いに行こうか?」
無邪気に腕を絡ませてきた沙織。柔らかい胸が俺の二の腕で潰れる感触。
さっきの俺なら、すぐに身体が反応して、また沙織から逃げ出していただろう。
だけど、今の俺は違っていた。
惨めさ、いたたまれなさ、悔しさ……とにかく色んな負の感情に、張り詰めていた糸が切れた俺は、沙織の腕を思いっきり振り払ったのだ。
信じられないような顔をして、固まる彼女に舌打ちを一つ。
そして、ギロリと沙織を睨み付けた。
「沙織が一人で手伝いに行けよ!」
「り、倫平……?」
「俺が行ったってお邪魔だし、二人で仲良く買い出し行けばいいだろ?」
俺が苛立つのは理不尽だってわかっているし、実際州作さんが来てくれなかったら、沙織はあのナンパ野郎達に連れていかれたに違いない。
だから、助けてくれた州作さんにも感謝すべきだし、彼が来てくれてよかったと沙織が言うのももっともなんだ。
だけど、そう簡単に聞き分けよく振る舞えるわけがねえ。
俺だってプライドってやつがあるんだよ。
この苛立ちの矛先は、俺の最愛の女の子に向けられてしまった。
「ど、どうしてそんなこと言うの!?」
俺の恫喝するような声に、沙織は顔が青ざめていく。
沙織に対して、怒ったことなんてない俺のキレている姿に、動揺しているのだろうか、沙織は目を見開いたまま固まっていた。
それでも、沙織のそんな姿を見ても苛立ちは収まることはなく。
何で俺がキレてるのか理解してない沙織に、舌打ちをもう一度。