感覚の呪縛(異なる選択)-2
「おいっ! いっぺんしか言わないから良く考えて答えるんだ。俺様の“モノ”を咥えるんだったら瞬きを一回、嫌だと言うのなら瞬きを二回するんだ。さあ、どっちにする? 俺様は、どっちだっていいんだぜ? もっとも嫌だと言うなら、もうひとつの方でたっぷり咥えてもらう事になるがな」
選択の余地の無いその言葉に……
……加奈は暗闇と静寂の中に居た。
五感の内二つ視覚と聴覚が奪われた事で、否が応でも残りの触覚・味覚・嗅覚に意識が集中され鋭さが増していく。
「加奈、解っていると思うがこの期に及んでおかしな考えは起こさない事だ。これはあの時同様お前自身が選択した事だ。猿轡を外したからと言って声を上げる事はもちろん、咥えた陰茎に少しでも歯でも立てようもんなら……」
そう念押しされてからきつめの目隠しと耳栓を押し込まれる。
猿轡が外されると大量の唾液が艶めかしく口元を汚す。
留吉は光沢を放つ髪を鷲掴みにすると節くれだった陰茎を頬に押し当てながら、徐々に口元に誘導していく。
やがて艶のある唇と異臭放つ陰茎先端が対峙すると、留吉の欲望が捻じ込まれ口中深く潜り込んで行く。
それが頬に触れた時よりその悍ましい感覚に、加奈の肌全身には拒絶の意思が浮かび上がっていた。
さらに口内に押し込まれた事により、その忌むべき存在の味覚を強制され、よりいっそうの嗅覚が刺激される。
三つの感覚全てが全力で拒絶の意思を示し、胃の中の内容物が急激に食道を逆流してくる感覚。
それを必死で堪え絶望的な状況の中、残された僅かな可能性に光明を見出そうとする加奈。
「おぉぉ、良い子だ加奈、よしよし、上手に出来たね」
聴覚を奪われた加奈にその声が届くはずも無いが、留吉はまるで孫娘でもあやす様に言葉をかけていた。
思いのほか熱心に陰茎へ快楽を注ぎ込む加奈に対し、生来の底意地の悪さと歪んだ性癖が満たさた事で、その表情には愉悦を超えたサディスティックな笑みが浮かんでいた。
左手で加奈の髪を掴み頭部を拘束しながら、右手指先で陰茎と唇との交接部分を確認する様になぞる。
留吉はこの交接部を指先で確認する行為がことのほか好きで、“口淫”を強いる時はもちろん“性交”時にも必ずと言って良い程行っていた。
それは行為を強いる相手に対し、所有権を誇示する意思表示に他ならなかった。
狡猾な罠に嵌めたり弱みを握った少女たちに対し、留吉は繰り返し“口淫”や“セックス”を強い続けてきた。
自身が行っている行為を被害者である少女たちに、より認識させる事で従属させようと言うのだ。
もちろん留吉も口淫による口内への射精よりも、膣への挿入による粘膜との摩擦での射精の方が好きであった。
しかしそれには当然避妊具装着が必要不可欠であった。
少女を妊娠させる事は自身の愚かな行為の露呈と、結果的には折角手に入れた少女を手放す事に直結するからである。
結果、導き出された留吉の思考は“一度の生だし”よりも、繰り返されるセックスであったのだ。
更に変質的な性癖を持ち合わせる留吉にとって、自身から放たれた精液を飲ませる行為が、被害者少女たちに自身を“受容れさせ屈服させた”と言う深い悦びを与えていたのだ。
「じゅぶっ じゅぶぅ じゅっぽ じゅっぽ」
その美しく整った口元から発せられるには、違和感さえ感じさせる淫靡かつ下品な音が留吉の陰茎を熱く滾らせる。
(加奈ぁ、やっぱりおめぇのフェラは別格だぜ。この二年間、何度夢見た事か…… 待ってろよ、今すぐ濃厚なヤツをたっぷり飲ませてやるからな。おめぇを犯るのは、それからでも遅くはねえ。なあに、おめぇだってコイツの味は忘れてねえはずだ。あと一度…… すでに自身の意思で二度口にしているおめぇには…… あと一度の“精飲”で…… )
加奈の苦しみを余所に、高揚感から可笑しな妄想に想いを巡らせはじめる、淫魔留吉。
はたして、留吉の妄想と思しき思考の先に“在る者”は……
次回タイトル 水面の少女(最終)に つづく
※次ページに、少々のオマケがございます。
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