匂い-1
「おはよーッス!!」
翌日元気過ぎる声を張り上げ出勤してきた海斗。休み明けにこう元気な姿を見せるという事は前日の釣りが最高だった事を意味するのは全社員が知っている。
「今日はワカメじゃないみたいだな!」
安田が寄って来た。担いできたクーラーボックスを開けると何人かの社員が寄って着た。
「わ、凄〜い!」
可愛らしく喜ぶのはやはり知香だった。
「カンパチたくさん♪あ、これイナダ??あとアジ!」
いつも海斗が持って来る魚を見る度に魚種が分かるようになった知香。それは聡美も同じだった。
「へ〜、いい型揃っるじゃないですか!」
聡美が感心しながら言った。
「いつもと釣り場を変えたんだよ。そしたら大当たりでな?深いせいか型がいいんだ。」
自信満々で言う海斗。知香や聡美、パートの事務員を中心に魚をきれいに分けて持って言った。
「洗っておきますね?」
「ああ。いつも悪いな知香ちゃん。」
「い〜え〜♪」
知香はいつもクーラーボックスを洗ってくれる。初めは手が臭くなるからと断ろうとしていたのだが、お礼にと洗ってくれるのだ。そんな知香を海斗は可愛く思い、ついついいつも贔屓してしまうのだ。勿論妹的に可愛いという意味だが。
「知香ちゃんは出来る子だね〜。それに比べてオメーらは貰うだけか!?」
「ベ〜だ!!」
他の女子達は海斗に舌を出して親指を下に突きだしていた。
「おはようございます。」
幸代が出勤してきた。幸代は今まで海斗から魚を貰った事が無い。あまり魚は好きではないからだ。でもこれからは少し貰おうかなと考えていた矢先だったが、あいにく売り切れてしまった。
「ま、お前は魚食わないもんな。」
「え、ええ。まぁ…」
平静を保とうとする。そんな幸代をいじりたくなる海斗。
「オメ−、魚食わないからオッパイでっかくならねーんだな!!ガハハ!」
「!?な、何ですって〜!!」
「魚食ってりゃ今頃おまえ、ボインボインだったぜ?魚は凄いんだ!俺なんか魚食ってるからチンコでっかくなったし髪もフサフサだろ!?」
「チンコとか知らないけど、良く魚食べてる部長はフサフサじゃないじゃないですか!?」
安田を指さす。
「おまえ…そりゃねぇよ…」
傷つく安田など気にもしない程興奮した幸代。
「魚なんか食べなくても大きくしてみせますから!」
「もう成長止まってんだろうが♪」
「今からですよ、今から!」
「楽しみにしてるよ♪」
「ええ。1年後には巨乳ちゃんですから。」
ひとバトルして仕事を開始する。まぁもはや海斗と幸代のバトルは恒例行事だ。けっこう皆も楽しみにしている。バトルしているぐらいが逆にいいバランスを保てるのかも知れない、そんな2人だった。