匂い-7
しかし海斗はしつこかった。口の中の肉を飲み込むのを待って再び聞く。
「どんぐらいのペースで…」
「だ、だからしてませんって!海斗さんこそどうなんですか!?毎回毎回風俗って訳にはいかないでしょう!?」
止めればいいものを更に会話を広げてしまう幸代。海斗は悪びれもなく答える。
「そりゃあAV見てシコシコするのさ!」
「シコシコ…、やだぁ…」
恥ずかしくなってしまう。
「俺な、高校の時に男っていつまでシコシコするんだろうって疑問に思った事があるんだよ。」
「し、しょーもなっっ!」
「でな、大人になってまでシコシコするのは情けないな、社会人になったら絶対止めようと思ったんだよ。でもな、止めらんなかったよ!ガハハ!」
「本当にしょーもないですね!」
聞いているだけで恥ずかしくなる。
「いいか幸代、ムラムラした時に風俗行く金がないとなるとたまる一方だ。ムラムラがたまりすぎると我慢しきれなくなり犯罪に走るかも知れないだろ?犯罪に走ったら大変だ。だから神は人間にオナニーを授けたんだ。オナニーは神からの贈り物だ。 だから恥じる事はないんだぞ、幸代!」
「し、知りませんよ!!」
「お前も犯罪に走ったら大変だ。我慢しちゃいけないぞ?」
「な、何ですか犯罪って!?」
「痴女になったら大変だ。」
「な、なる訳ないでしょ!?マジ頭悪っっ!!」
思わず周りなど気にせずに話していた。幸い誰も会話に気付いている様子はなく胸を撫で下ろした。
「ま、俺にはお前が痴女になろうがならまいが関係ないがな?ガハハ!」
(だったら聞くなっつーの!!)
溜息をついて食事を済ませた。
(でもこんな会話を出来るのはやっぱ焼肉だからかなぁ…。)
幸代は一人で焼肉デートの法則を思い浮かべていた。
食事を終え車に戻る2人。
「ごちそうさまでした!」
「ああ。」
車を走らせた海斗。幸代は服に焼肉の匂いがついた事に気づき香水をかけた。
「こ、香水臭っ!!」
鼻をつまむ海斗。
「女の子の身嗜みですから。我慢我慢!」
「お前、やっぱり体臭キツいんだろ!」
「違います!!焼肉の匂いですから!!」
相変わらずの騒がしい2人。どうしようもない会話だが幸代にとってはなきゃそれはそれで寂しいものになりつつあるのであった。