匂い-6
食事中、幸代はふと海斗に言ってみた。
「焼肉デートって男女間においては親密度を計るって言うか、そーゆー意味合いがあるって良く言いますよね??」
海斗は肉を口から半分出しながら答える。
「知らねーし!」
幸代は苦笑いを浮かべる。
「ですよね〜!アハハ。」
海斗がそんな事をいちいち気にして行動してるとは思えない。初めからそう言う答えが返ってくる事を予想して聞いてみた。しかし海斗にデリカシーがない事も分かっていながら聞いたのが失敗だった。
「何だオメー、俺と親密な関係になりてーのか??」
幸代は焦る。
「い、いや、そう言う事じゃ…」
「はっ!もしかして肉を食わせて精力つけさせて今からホテルへ連れ込もうって気じゃねーだろうな?」
「はぁあ??ち、違いますよ!!だいたい焼肉選んだのは海斗さんじゃないですか!?」
「そうだっけ??」
「そうですよ!それに私、海斗さんに抱いて貰わなくても間に合ってますんで!」
「あれ?彼氏いたっけ??」
「い、いませんけど…。」
「彼氏いなくて間に合ってるって事はおまえ…」
いやらしくニヤリと笑った。
「ち、違いますから!!」
顔を真っ赤にしてしまう幸代。自分が言ってる事の矛盾にどう応えていいか分からなくなってしまった。
「別に何でもないです。忘れて下さい。」
強引に話を終わりにしようとした。
「おまえ…そうかそうか。そうなんだ。」
肉をムシャムシャ食いながらニヤニヤする海斗。
「だから違います!!一人でなんかしてませんから!!」
海斗は完全に顔が悪戯モードに入っていた。
「何を??」
「何をって…。いいから忘れて下さい!」
海斗に変な事を言うとこうなるのを忘れていた。だからと言って猥談に合わせる事も無理だ。幸代も無理矢理肉を口の中に詰め込んで会話不能状態を作り出し会話をシャットダウンしたのであった。