匂い-4
そしてアントニー本部に着き、商品部長の宮本と商談する。新店のレイアウト図を渡す。
「こ、これはまた斬新な…」
海斗から渡された図面を見て驚く。
「イメージはパリです。あの凱旋門を中心に放物線状に伸びる道路。それをイメージしました。棚の高さは最小限に抑え全体を見渡せるようにしてどこに何があるのか分かり易くしました。壁には商品を飾らずプロスポーツの競技シーンの写真か絵を描きます。モニターも配置して競技映像を流しましょう。これぞスポーツ用品店!そんな店をイメージしました。」
幸代も初めて見る図面だが、その斬新さはすぐに分かった。宮本は目を閉じた。頭の中でイメージしているようだ。
「うん。いい!これで行こう!」
「ありがとうございます。」
当然と言わんばかりの海斗の横顔をチラッと見た幸代。
(か、カッコイイ…)
思わず見取れてしまいそうだ。とても釣りバカの変態セクハラオヤジには見えなかった。
「じゃあ次は陳列商品の選定だな。来週中に決まるかな??」
「はい。当然。」
「じゃ、頼んだぞ。」
ここで今日の商談は終わった。ここからは雑談タイムだ。
「スカートは珍しいね?」
いつもズボン姿しか目にしていない宮本はすぐに気付く。
「変ですかね??」
「いや、似合ってるよ。」
その言葉を聞いた瞬間、どうだと言わんばかりに海斗に言った。
「ほら〜、普通は似合ってるよって誉めてくれるんですからね〜?」
宮本が不思議そうな顔をした。
「どう言う事??」
「さっきですね、同じ質問を海斗さんにしたんですよ。そしたらムラムラするだのエロいだの、そんな事しか言ってくれないんですよ??」
「アハハ!海斗くんらしいな!」
「エロいもんはエロいんだよ。」
「似合ってるよの一言が言えないんだから〜。」
「るせぇ!」
海斗の偏屈ぶりで盛り上がる。
「まぁ、エロい=セクシーって事。海斗くんも君を女だと認めてる証拠さ。」
「えっ?そうなんですかぁ??」
わざとらしく聞く幸代。
「知らねーよ!」
面倒臭そうに吐き捨てた海斗に幸代と宮本は笑った。
それからやはり釣りの話をしてからアントニーの本部を後にしたのであった。