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子羊の悩ましい日々
【ファンタジー 官能小説】

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『子羊の悩ましい日々 〜フィー・モウセンゴケ編〜』-1

「いっちに、いっちに……」
 いつものように、礼拝堂の最下層にある大きな扉の前に来たロイ。歓迎会の日から二ヶ月が過ぎ、自分の運命はすでに受け入れていた。扉に入る前に、入念に準備体操をするぐらいの心の余裕が今はある。
「よっ……」
 両足を大きく広げて座ったまま、クニャっと身体を前に倒すと、まったく普通の表情で胸が地面につく。運動能力は鈍いロイだが、身体の柔らかさは相当なものだ。これまでの人生で特に役立つことはない特技だったが、今ではモンスターとの性交渉でこの身体の柔らかさが役立っている。少々無理そうな体位でも意外と何とかなるのだ。
「さてと、お勤めお勤め……」
 ともすれば快楽のみに流されそうになる自分を律するために、これは仕事だ
と自己暗示をかける独り言だ。
「ラーナ神は、ときに快楽を貪ることを否定していらっしゃらないわよ」
 ソフィアはそう言うし、ロイ自身もラーナ神に仕える司祭としてそのことは知っているが、なんとなく割り切れないのだ。その真面目さゆえに周囲の女性がちょっかいをかけたがることに気づいていない。
 最後に胸元で聖印を切ると、大きな扉をゆっくりと開け放った。

「う〜ん、またこれか」
 扉を開けると、相手をするモンスターの生息域に飛ばされる。そして、今ロイがいる場所は森だ。森にいるモンスターは人型をしたものが多いため、必然的に森に飛ばされることが多いのだ。
 ロイ自身はそんなに森が好きではない。足元はジメジメしているし、日があまり差し込まないので全体的に暗い。どうも陰気な印象を受ける。また、室内でいることが多かった身のため、森の中の強烈な土や植物の匂いにどうも慣れない。
「……ん?」
 土の匂いに混じり、甘い心地よい匂いが漂っていることに気づく。
 こうした匂いの大半は危険に通じるものということを頭の中では理解しているが、その思いとは関係なしに足が勝手に動いていく。そうして歩みを進めるごとに匂いは強くなり、ますます脳に霞がかかったようになる。
「ここらへん、地面がすごい濡れてるなあ……」
 一歩歩くたびにズチャッ、ズチャッという音と共に水が靴を濡らす。あとで靴を洗って乾かさなきゃな、とぼんやり考えていると、靴は濡れているのを通りこして、ベタッ、ベタッと糸を引いていることに気づいた。そのときには、すでに歩くことすら困難になるほど、靴の裏と地面がくっつき始めている。匂いに惑わされていたので気づくのに遅れたようだ。
「……!?」
 慌てて靴を脱ごうとすると、いきなり地面が動いた。いや、正確には、地面に埋もれていたものが姿を現したのだ。
「うわっ!?」
 無数の紅紫色の線毛が生えた緑色の丸い葉。ロイは、その葉が出している粘液に捕らえられていたのだ。すでに、足首を線毛がまとわりつき、ロイを逃がさないようにがっちり固定している。
「モ、モウセンゴケ!?」
 粘液で虫を捕らえる食虫植物。数多の種類がある食虫植物の中でもメジャーな種類だ。しかし、その大きさはロイを簡単に捕らえるほど巨大だ。
「なるほどねえ……」
 これが今日の相手と悟り、ロイはじたばた暴れるのをやめる。そうこうしていると、ロイを捕らえている葉の一部が盛り上がり、それは人間の少女の上半身の姿をとった。身体は薄い緑色で、髪と瞳は線毛と同じ紅紫色をしている。


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