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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 2.-13

「もう……、ユリさんの自由にしていいです」
「そう?」
 友梨乃は笑って毛抜ハサミを持ち出すと、「ちょっとだけチクっとするよ?」
 さっきは躊躇ったが辛抱できなくて、眉尻を友梨乃好みにシャープに整える。男として過ごす時間もあるわけだから、あまり抜くと眉がなくなってしまうので気をつけた。そしてアイブロウを書き込んでいく。自分で眉を整えるのは鏡が左右反転するから難しいが、他人の眉を書くのは簡単で、満足の行く角度を作り出すことができた。
「ちょっと、危ないから、目閉じててね?」
「……え、危ないことなんてあるんです? 化粧に……」
「ん……、目元いじるから」
「……はい」
 と言って陽太郎は目をぎゅっと閉じた。
「そんなに強く閉じたらできないよ」
 友梨乃は笑って、アイシャドウの筆先で陽太郎の瞼を突ついた。「もっと自然に閉じておいて」
 アイライナーのペンシルの先を瞼に近づけていって、
「ちょっとこそばゆいよ。動いたらずれちゃうからね」
 と言って、睫毛の際をライナーで引き始める。
(睫毛、キレイだな……)
 超至近距離で瞼のアップを見ていると、陽太郎の目元はかなり女性的だった。
(ちょっと濃い目にしたほうが似合うかも)
 上下の際に太めに引いて、
「ちょっと目、開けてみて」
 と言うと、陽太郎はおずおずと目を開いた。友梨乃はすぐ目の前でその両目に見据えられてドキリとした。自分好みの瞳に仕上げたのだから当たり前だ。陽太郎は陽太郎で、目を開けたら恋いている顔がすぐ前にあったから鼓動を高鳴らせている。ビューラーを当てて、
「もっかい閉じて」
 陽太郎が瞼を下ろすと友梨乃は陽太郎の睫毛を上向かせ、「開けて」
 もはや友梨乃に言われるがままに従う陽太郎の睫毛の反り具合を確認したあと、納得したように小さく頷いて笑い、マスカラで強調させていく。友梨乃の黒目は陽太郎の目に集中して、何か大事なモノを扱うように丁寧に塗っていく。陽太郎から見えるその真剣な表情は、仕事の時に見せる以上の眼差しで、凛とした美しさを感じた。
「目の周りって、自分で自分のするより、人のをやるほうが簡単だね」
 友梨乃は満足いく目に仕上げたあと、集中を解いて、ふっ、と息をつくとカゴに立てているいくつか持っているグロスの色味を確認した。淡い色のほうがいいだろう、と判断を下して、ドレッサーの上に一旦置くと、
「もうちょっと顎上げて?」
 とファンデーションを陽太郎の唇周りにもつけ始めた。
(ぷるん、てできるかも……)
 陽太郎の唇の形に期待を持ってリップペンシルを唇に近づけていくと、陽太郎が僅かに身を捩らせて怯んだ。
「ユ、ユリさん……、く、口紅……」
「ん? ……どうしたの?」
「ユリさんが、使ってるやつ、ですよね……?」
「そうだけど。……、え? いまさら?」
 友梨乃は可笑しそうに肩を一度ゆすって笑った。「間接どころか、……この前、直接された」
「そらそうですけど……、イヤじゃないんですか?」
「……大丈夫。唇閉じないでね」
 と言って友梨乃はペンシルで唇を縁取り始める。唇のすぐ前まで顔を近づけて覗き込むようにされると、すぐ前に麗しい友梨乃の唇が迫って、陽太郎にとっては拷問に近かった。縁取った中に薄く口紅を塗り伸ばすと、リップグロスを手にとって、唇に乗せていく。ティッシュを手に取ると折り目を唇に添えて、
「ちょっとだけ口閉じて」
 余ったグロスを染み取らせる。「……すごい」
 自分でやっておきながら、驚嘆の溜息を漏らした。陽太郎の唇は世の中の女性がそうしたくて苦心している厚みと光沢で輝いている。身を屈めてずっと陽太郎の顔を覗きこんでいた友梨乃は、身を起こすと改めて陽太郎の顔を見た。
「どう……、ですか?」
「どう思う?」
「いや、自分ではわかんないっす」
「じゃ……」友梨乃は目線で陽太郎の横の鏡に導いて、「見てみたら?」
 友梨乃が言うと、陽太郎は椅子を正面に座りなおして鏡を見た。――そして声もなく目を見開いているのが、鏡越しに友梨乃にも見えて、思わずふき出してしまった。
「……写メ、撮ってあげよっか?」
「いや、大丈夫です……。誰だ、これ」
 陽太郎の感想を友梨乃は声に出して笑ってしまった。
「誰って、藤井くんだよ、それ。自分で自分を好きにならないでね? そうなったら本当にあぶない」
「……自分に惚れてもうたら確かにヤバいっすね」陽太郎も笑って、「さすが、プロにやってもらうと違いますね……」
「プロじゃないよ。女の子なら、誰でもやってるよ。……わかったでしょ? 女の子は大変なの。これだけの道具揃えるのもお金かかるし、時間もかかるんだから。化粧で顔がどうのこうの、ってもう勝手なこと言えないでしょ?」
 もちろん友梨乃が自分でするのよりも念入りに施した時間も含まれていたが、時計はかなり進んでいた。


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