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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 1.-4

「あ、そうなんですか」
 こっちの人のほうが気さくでええな、ま、同じ関西人やからかな、と思いながら、カウンターテーブルを拭いていると、
「なー、今日これからヒマ?」
「……え? あー……、はい、特に用事ないですけど」
「飲みに行こ」
 また女に声を掛けられた。こっちを見て笑っている智恵を見ると、友梨乃ほどではないがやはりコーヒーショップの社員だけあってルックスは良いほうだったから、もしやの「飲みに行った後」があってもいいと思い、
「いいですけど、俺、未成年なんで飲んだら怒られますよ?」
 と言った。
「うそん……、でも、まあ、飲んどるやろ? いつも」
「まぁ、そうですけど……。未成年が飲んでんのバレたら、一緒に居た大人も罰せられるって聞いたことありますよ?」
「オトナて」智恵は笑った。「人をオバハンみたいに言うな。多分1コか2コくらいしかちがわへん。……まーええやん。飲みながら東大阪の話しよーやー」
 出た、関西人の「まーええやん」。関西人のこの言葉は特に何の理由も根拠もなく言うものだ。
「じゃ、行きます」
「オッケ。ユリも誘うで? ……ほんじゃ、はよ終わらそ」
 と言って智恵は喫煙室を出て行った。三人かあ、と智恵と二人きりでは無いことに陽太郎は少しガッカリした。




 新大橋通りを少し南下したところにあるチェーン店の居酒屋に三人で入った。一応店長にも声を掛けたが、俺はいいよ、ごめん、と言って帰って行った。
「……まー、こっから久喜まで帰らはるからな、店長」
「久喜ってどこですか?」
 陽太郎と智恵の手元に一杯目のビールがやって来て、一応藤井くんの歓迎会ということで、と智恵が声を上げて乾杯をした。友梨乃はカシスオレンジだった。店長って飲まないんですか、と聞いたら、智恵がそう答えたのだった。
「埼玉の……、いや、どの辺かわからんけど、こっから結構あるはず。しかも駅からもかなりあるっちゅうてたし、決死の覚悟で買ったマイホーム」
「へぇ……。でも埼玉に住んでたら、埼玉の店じゃないんですね」
「そんなん関係ないがな!」智恵はビールの炭酸を喉に通して顔をしかめながら、「店長なんか大変やで。朝8時開店やけど7時頃には来てはるし、20時閉店で、閉店作業終ったらこの時間やろ?」
 時計は21時をゆうに回っていた。
「あー、確かにそうですね」
「ウチらの店の周りって会社多いやろ? せやから朝が一番客多いねん。8時開店を7時半か7時にしよか、っていう話もあるし。……そんなんされたら、店長死ぬで。休みも土日関係なしやし。子供が顔忘れるって言うてた」
 人ごとだからだろう、智恵は笑いながら言った。
「じゃ、鳥山さんとかも大変なんですね」
「ウチら? まあ、ウチらは契約社員やからね。まだ、気楽」
「契約社員……、って、すみません、どう違うんです?」
「お、社会勉強やな? 学生さん!」智恵は友梨乃の方を向いた。「そーいう話はセンセイから聞いたほうがえーんちゃうん?」
 友梨乃は急に話を振られて、は?、という表情をしてから、
「……契約社員は、働く期間に期限があるんです。私たちは1年更新」
 と言った。
「何年やったら正社員にしてー、って言えるんやったっけ?」
 知らないの?、という顔で友梨乃は智恵に向けて指を離した手のひらを広げて見せた。
「へぇ……、鳥山さんも四方木さんも正社員になるんですか?」
「まー正社員のほうが聞こえはええからなぁ、……でもあの店長見てて、なりたいって思う?」
 と智恵が友梨乃を覗きこむと、友梨乃は少し困った顔で苦笑をして小さく首を横に振った。
「せやろー。……って、仕事終ったんやから、こんな話やめよーやー。……すみませーん!」
 智恵は早々に空けたジョッキを掲げて、同じものを頼んだ。「そーそー、ウチ、東大阪の話しにきたんやった、藤井くんと。ウチの周り、関西人全然おらへんから、大阪の話に飢えてんねん」
 まだ東京に出てきたばかりの陽太郎は決して飢えてはいなかったが、
「東大阪のどのへんですか?」
 と問うた。
「布施。あんたは?」
「高井田です」
「めっちゃ近い」
 と智恵は笑った。「でも自分今、私のこと元ヤンやと思ったやろ?」
「なんでなんすか、そんなことないですよ」
「いや、絶対思たて。顔に出てる。……おんなじのでええの?」
 智恵は陽太郎が空けたジョッキを指さした。あ、すみません、じゃ同じので、と言いながら陽太郎は友梨乃のグラスを見たが、カシスオレンジはまだ随分残っていた。
「思ってませんって。ただ、中学の時に思いっきりカツアゲに会いましたけど。布施の駅前で」
「……まー、それはしゃーない。自分みたいなガリ勉、カッコウの的や」
「しゃーなくないし、ガリ勉ちゃいますけど」
「でも、東京の大学に来てんねんろ? マジメ君やん。高校どこやの?」
 出身高校を口にすると、智恵は「ほらみてみぃ」と若干巻舌で言った。
「鳥山さんはどこの高校なんすか?」
「あー、もう、鳥山さんてなんかゾワっとするから、智恵でええよ、店以外では。……ウチは中卒。……ほら、私のことヤンキーやと思ったやろ?」
「なんなんすか、めっちゃ絡んできますね」


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