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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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生きている理由-3

「はい、新鮮な林檎…剥いといたから。」
「ありがとう、母さん。」

丁寧に剥かれた鮮やかな林檎、僕はそれを口に入れる。

「あっ!美味しい!甘くて酸っぱくて。」
「ホント?良かった。」

お互い笑みを浮かべる、こうして見ると悩み何て無いように見える。

「綺麗な青空、ほらっ!見てよ絆。」
「えっ……。」

げんきんな母親、こういうのは万国共通なのだろう。僕はベットから降り母と同じ物を見上げる。すると、透き通る青色に薄い白い雲がプカプカと浮いており。

母と肩を並べる、不意に肩へ母の優しい手の感触を感じる。僕は頬を赤く染める、少し照れくさいけど、嬉しいな。

「覚えてる?貴方がまだ小学生だった頃、公園で「これは空飛ぶ芸術だー」って言って暗くなっても帰ろうともせず、夢中になって筆を走らせてた事。」
「それは……。」
「あの後、急に雨が降って…クスッずぶ濡れで泣いて帰ってきたもんね。」
「素晴らしい記憶力で…。」
「どういてまして。」

昔の話を引っ張り出す(それもほとんど苦いエピソード)。やれやれ…、でもそれだけ愛されているんだなぁ。

「…いずみの出産で不安だった私に花の絵が描かれた画用紙をプレゼントしてくれた絆、
今でも昨日の事のように思い出すなぁ。」
「母さん…。」
「……神様は意地悪よね、どうしてこんないい子が死ななければならないのか…。」
「……。」
「御免ね絆、お母さんがちゃんと貴方を産んであげられなかったから、こんな。」

徐々に泣き声と化していき。

「どーせ、病に掛かるなら私にしろっ!貴方に持病があると聞いた時、神社の前でそう何度も叫んだ…。」
「……落ち込まないで母さん、僕がこんなになったのは母さんのせいでない、むしろ…良かったよ僕で…。だってそれによっていずみが持病に侵されないで済んだかも知れないじゃん…。」
「絆…。」

強がって見せたけれど、現状は変わらない。

「母さん…。」
「?」
「僕、生きてて楽しかった…杏に出会えて絵と出会えて、大好きな家族に囲まれて、こんな幸せな世界に産んでくれて…そして今まで育ててくれて、ありがとう。」
「っ……。」
「僕が死んでも嘆かないで、後出来たら杏の事を。」
「何言ってんのよっ!」
「!!」
「お父さんも言ってたでしょ?まだ死んだと決まった訳じゃないって。」
「でも…。」
「確率が低いのは解ってる!でも、それが何?それでも生きるのよ!このまま諦めてまた
飛び降りでもしたら母さん一生許さないからねっ!」
「母…さん。」

泣きわめく母、諦めるな…かぁ。

「そうです、希望は持ち続けましょう。」
「!?」

扉の向こうから姿を現す担当医。あの日、手術失敗を告げた時に比べやけに自信に満ち溢れた表情をしている。

「先生…。」
「希望は最後まで持ち続けるものです。」
「…一体、どういう…。」

先生まで、そんな事を…何故?

「新たな臓器が、見つかったんです。」

えっ?


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