甘い時間-5
「よし、そのまま上げるぞ!せーのっ!」
かけ声とともに一気に魚を持ち上げた。
「うわぁ!!」
瀬奈の目に映った魚は物凄く大きかった。その魚体がスローモーションのように宙を舞い、そして岩場に落ちた。
「ハァハァ…ハァハァ…」
息を切らしながら魚を見つめる瀬奈。呆然と魚を見つめていた。
「こりゃデカイわ!40センチはあるカンパチだ!!」
「か、カンパチ…」
「オメーが釣ったんだぞ?ほら!」
海斗が魚を持ってきた。
「わっ…」
嬉しさよりも驚きの方が大きかった瀬奈だった。
「お魚屋さんで売ってるやつみたい…」
海斗の手の中でビチビチ暴れるカンパチを見て唖然としていた。
「スゲー引きだったろ、コイツ。」
「うん。海に引っ張られちゃうかと思ったよ…。」
「こんなデケーのなかなか釣れないぜ?この場所、当たりかもな!」
海斗も嬉しそうだ。セルフタイマーを使い記念写真を撮った。
「じゃ、可哀想だが…。」
海斗はカンパチのエラあたりにナイフを当てグッと力を入れた。
「わっ!首ちょんぱしちゃうの!?」
「これはシメるって言ってな、すぐ血抜きするんだ。こうしないと青物はすぐ傷んじゃうからな。こうしておけば当たる事はないんだよ。」
「そうなんだ。」
血を抜き終えたカンパチをクーラーボックスに入れた海斗をポーッと見ていた。
「ん?どうした??」
「あ…、ううん?な、何でもない…」
思わず顔を背けた。
「変な奴だな!ほら、チャンスだ。どんどん釣るぞ!」
「う、うん。」
それから2人の竿はしなりっぱなしであった。海斗の特大クーラーボックスはもう半分埋まってしまった。8時を過ぎ、さすがにペースは落ちたが、コンスタントに釣れ続けた。気付けばもう昼になっていた。
「お弁当食べる??」
「ああ、もう昼か、早いな。」
2人は竿を休めて昼食をとる。
「また豪華な弁当だな!いただきまーす!おっ、ウメーウメー!」
「アハッ!」
豪快に食べる海斗を見て笑いながら一緒に昼食をとる。
「なんかのんびりできていいねぇ。気持ちいい。」
「だから海が好きなんだよ、俺。釣れても釣れなくても、こうして海を眺めてるのが好きなんだよね。」
そう言って海を見つめる海斗の横顔を見て優しく微笑む瀬奈。視線を海に向け、そして青空を見上げた。
「好きになっちゃった…」
「えっ?」
ドキッとして振り向く海斗にニコッと笑って言った。
「釣りが!エヘッ!」
舌を出して悪戯っぽく笑った。