甘い時間-4
まだ体が震えている。今までに体感した事のない種類の興奮が冷め止まない瀬奈。釣れた魚を掴んだ手も震えていた。
「嬉しい…、超嬉しい!!」
子供のようにはしゃぐ瀬奈。
「スゲーな!お前、釣りの才能あるんじゃねーのか!?」
「かなぁ!ヘヘッ!」
海斗は瀬奈と一緒に針を外して行く。そしてクーラーボックスに魚を入れた瀬奈はビチビチ跳ねる魚を見て感無量の表情を浮かべていた。
「アジだよね、これ!」
「ああ。そうだね。」
「お刺身にする?タタキ?それともフライ??」
「刺身とタタキでいくか!」
「オッケー♪釣れてくれてありがとう。ごめんね?」
そう言ってクーラーボックスを閉じた。
「よし、こりゃ釣れるぞ!どんどん行こうぜ!」
「うん。」
瀬奈はさっきの海斗の様子を見た通りに籠にコマセを入れ、教わった通りに仕掛けを投げた。
「おっ!スゲーじゃん。もう覚えたじゃん!」
「ヘヘッ!」
なかなか筋がいい瀬奈に感心しながら海斗も釣りを始めた。すぐさま瀬奈も海斗もアジを釣り上げた。
「やーん!また釣れた!!」
大喜びの瀬奈。釣った魚をクーラーボックスに入れた。しかし海斗は別の海水の入ったバケツに釣ったアジを入れた。
「あれ?生かしておくの??」
不思議そうに聞いてきた。
「これを餌にしてカンパチを狙うのさ。」
別な仕掛けを装備した竿を持ってきて針に釣ったアジをつけた。
「ほら、竿持ってみろ。」
「う、うん。」
竿を受け取る。
「これは少し投げればいい。軽く投げてみて?」
「うん。」
瀬奈は軽く投げる。3メートルも飛ばない場所に落ちた。
「糸の出が終わったら弛んだ糸を巻いて張った状態でそのまま持っててな?」
「うん。」
言われた通りに竿を持っていた。するといきなりだった。物凄い引きだ。竿が海に引きづり込まれそうになる。
「きゃー!な、何これ!!」
「もう来たか!!」
油断していた海斗は慌てて瀬奈の元へ急いだ。
「ダメー!イヤー!!」
引きに負けそうだ。慌てて背後から海斗が竿を持つ。
「こ、交換…」
「しねーよ。俺が支えててやるから一緒に釣り上げようぜ!」
「えっ…う、うん!」
物凄い引きだ。さっきのアジなど比べ物にならない程に、底に底に引っ張る強烈な引きに瀬奈は再び体を振るわせる。しかしそんな中、体を包み込むかのように後ろで一緒に竿を支える海斗に安心感を与えられる。だがあまりの凄い引きに何が何だか分からなかった。