私の王子様-15
「……しかし……しかし……私は……私は……認めーーん!!」
バーン!!
頭の中では納得している父親ギルフォードだったが、気持ちは別問題。
娘よりも父親である自分と年の近い相手など、しかも軽薄王子と名高い男など、更に遠い異国の危険な領地の当主など、とにかく相手が誰であろうと嫌なものは嫌だ。
娘離れの出来ていないギルフォードは、ドアを蹴破って部屋に乱入する。
「わっ」
「お父様??!」
部屋の中では愛を誓いあった2人が濃厚な口づけを交わしている最中で……。
「私の娘から離れろっ!!軽薄王子!!」
怒号と共に抜かれた剣を突き付けられたデレクシスは、素早くジェノビアを抱き上げて窓から外へと飛び降りた。
「えっえ?きゃあっ?!」
あまりの早い展開について行けず、ジェノビアは慌ててデレクシスにしがみつく。
「待て!!逃げるな!!」
外で巨大化して待機していたザックの背に、ジェノビアごと飛び乗ったデレクシスは爽やかな笑顔をギルフォードに向けた。
「ギルフォード殿!このままジェノビアを連れ去る事をお許し下さい!」
「何だとぉ!?」
反対されても諦める気はさらさら無いので、許してくれないなら拐って行くしかない。
「ま、待て!いかん!いかんぞ!こういう大事な事は然るべき形式にのっとって……」
「では、許して頂けますのね?!お父様!!」
「う゛」
「……おじ様。参りましょう」
「わ、分かった!認める!!認めるから!!」
ギルフォードはがっくり肩を落として2人の仲を認める。
その途端、歓声と共にあちこちから紙吹雪が舞う。
これだけ騒いでいたので城内の人間、殆どが見ていたのだ。
そして、端から見て分かりやすい2人がやっとくっついた、と祝福していた。
項垂れるギルフォードにそっと寄り添ったステラは、彼を見上げてふんわりと微笑む。
ギルフォードは苦笑でそれに応え、ステラの肩を抱き寄せた。
巨大な鳥の上で改めて誓いの口づけを交わす2人に、歓びの歓声と祝福の紙吹雪がいつまでも降り注いでいた。